【フランス語文法#62】接続法現在

フランス語の「接続法現在」は、話し手の主観や感情、希望、不確実な状況を表すために使われる動詞の形です。
日常会話や文章でも頻繁に登場しますが、直説法とは活用や使い方が異なるため、混乱しやすい項目です。
このレッスンでは、接続法現在の基本的な意味と活用パターン、よく使われる場面を解説します。
1. 接続法現在の基本
1-1. 動詞の法と接続法
フランス語の動詞には、法(mode)と呼ばれるカテゴリーがあります。
その中で「接続法」は、話し手の主観的な判断や感情を反映した表現をするための法です。
直説法が事実や現実を述べるのに対し、接続法は「〜であると私は思う」「〜であってほしい」「〜かもしれない」といった、確定していない事柄や気持ちに用いられます。
- 直説法:事実・現実・確定していることを表す
例:Il vient demain.(彼は明日来る)
→ 事実として述べている - 接続法:感情・希望・疑い・不確実なことを表す
例:Je veux qu’il vienne demain.(彼に明日来てほしい)
→ 希望を表す
1-2. que節(従属節)が接続法の舞台
接続法はほぼ必ず、que で始まる従属節に登場します。
この節は、話し手の感情・意志・判断・不確実性を表す場合に接続法になります。
- Je veux que tu viennes.
(君に来てほしい) - Il est nécessaire que nous finissions ce travail.
(この仕事を終える必要がある)
このように、「主節 + que + 主語 + 動詞(接続法現在の活用)」の形で使われます。
1-3. 主語が同じ場合は不定詞を使う
「主節」と「従属節」の主語が同じ場合は、接続法ではなく不定詞が使われるのが一般的です。
- ◯ Je veux partir.(私は出発したい)
→ 主語が同じ場合は通常の直説法を使う。 - ✖️ Je veux que je parte.
→ 主語 Je が主節と従属節で使われているので不自然。
2. 接続法現在の作り方(規則動詞)
接続法現在の作り方を、第1群動詞(-er動詞)を例に説明します。
- 動詞の直説法現在の3人称複数形(ils形)を取る。
例:parler → ils parlent - 語尾の -ent を取って語幹を作る。
例:parl- - 接続法の語尾を付ける。
このように、規則動詞(1群 -er 動詞)の場合は、直説法現在の3人称複数形(ils形)から語幹を取り、以下のように接続法の語尾を付けます。
人称 | 語尾 | 例文:parler(話す) |
---|---|---|
que je | -e | que je parle |
que tu | -es | que tu parles |
qu’il / qu’elle / qu’on | -e | qu’il parle |
que nous | -ions | que nous parlions |
que vous | -iez | que vous parliez |
qu’ils / qu’elles | -ent | qu’ils parlent |
3. 接続法現在の不規則動詞
接続法現在では、規則動詞(-er / -ir / -re)とは異なり、特別な形になる動詞がいくつかあります。
頻出動詞である être(〜である)、avoir(持つ)、aller(行く)の接続法現在の活用形は以下のようになります。
être(〜である)
人称 | 形 |
---|---|
que je | sois |
que tu | sois |
qu’il/elle/on | soit |
que nous | soyons |
que vous | soyez |
qu’ils/elles | soient |
avoir(持つ)
人称 | 形 |
---|---|
que je | aie |
que tu | aies |
qu’il | ait |
que nous | ayons |
que vous | ayez |
qu’ils | aient |
aller(行く)
人称 | 形 |
---|---|
que je | aille |
que tu | ailles |
qu’il | aille |
que nous | allions |
que vous | alliez |
qu’ils | aillent |
4. 接続法現在が使われる場面
4-1. 感情や気持ちを表す
主節に感情や気持ちを表す表現がある場合、従属節の動詞が接続法になります。
- Je suis heureux que tu viennes.(君が来てくれてうれしい)
→ viennes は venir の接続法現在(2人称単数形)
4-2. 必要・義務を表す
“Il faut que〜”(〜しなければならない)など、義務や必要性を表す文でも接続法が使われます。
- Il faut que nous finissions ce travail aujourd’hui.
(私たちは今日この仕事を終えなければならない)
→ finissions は finir の接続法現在(1人称複数形)
4-3. 願望・希望を表す
vouloir(欲しい)、souhaiter(望む)など、希望や依頼の表現のあとでは接続法になります。
- Je veux que tu fasses tes devoirs.
(君に宿題をしてほしい)
→ fasses は faire の接続法現在(2人称単数形)
4-4. 疑いや不確実性を表す
penser(思う)、croire(信じる)などの動詞が否定や疑問形になると、接続法が使われます。
- Je doute qu’il soit là.(彼がそこにいるとは思えない)
- Penses-tu qu’elle ait raison ?(彼女が正しいと思う?)
4-5. 特定の接続詞の後にも接続法を使う
特定の接続詞のあとには、必ず接続法を続けます。
- bien que(〜だけれども)
例:Bien qu’il fasse froid, nous sortons.
(寒いけれども、私たちは外出する) - pour que(〜するために)
例:Je te l’explique pour que tu comprennes.
(君が理解するように説明する) - avant que(〜する前に)
例:Pars avant qu’il ne pleuve.
(雨が降る前に出発しなさい)
5. まとめ
- 接続法現在は、感情・必要・希望・疑い・特定の接続詞の後に使われる。
- 活用は「直説法現在の3人称複数形 → 語幹 → 接続法語尾」。
- 不規則動詞は特に頻出なので暗記必須。
- 「主語が同じ場合」は接続法ではなく不定詞に置き換える。
- 会話でも頻繁に出る表現(Il faut que / Je veux que / Je suis content que)から慣れるのが近道。