Lesson 05|リエゾンとアンシェヌマン

フランス語を学んでいると、「単語と単語が滑らかにつながって聞こえる」と感じたことはありませんか?それは、フランス語特有の音声変化の仕組みによるものです。
とくに重要なのが「リエゾン(liaison)」と「アンシェヌマン(enchaînement)」と呼ばれる現象です。
これは正確な発音や聞き取り力に直結し、自然な会話をする上で避けて通れない重要なポイントです。
このレッスンでは、両者の違い、ルール、そして学習方法について詳しく解説していきます。
リエゾンとアンシェヌマンとは?
リエゾン(la liaison)
リエゾンとは、語末の本来発音されない子音が、次の語が母音や無音の h で始まるときに現れて発音される現象です。
vous avez → 発音:[vu ‿z‿ ave]
(語末の「s」が[z]音となり、次の母音とつながる)
このようなリエゾンは「文法的に正しい音のつながり」として定義されており、場面や文脈によっては「必ず行う」「してもしなくても良い」「してはいけない」の3つに分類されます。
アンシェヌマン(l’enchaînement)
語末の「もともと発音される子音」が、次の語に自然につながって発音される現象です。
avec elle → 発音:[avɛ‿ k ‿ɛl]
リエゾンとの違いは、「隠れていた子音を発音する」のではなく、「すでに発音する子音が滑らかに連結される」点にあります。
文法のポイント解説
リエゾンが必須/任意/禁止ケース
フランス語のリエゾンは、実は「どこでもいつでもしていい」わけではありません。
文の中でリエゾンが必要な場合、しても良い場合、してはいけない場合の3つに分かれます。
リエゾンが必要な場合
文法的に必ず行わなければならないリエゾンです。発音しないと不自然になり、文法的な誤りとされることもあります。
例えば:
フランス語 | 発音 | 意味 |
---|---|---|
les enfants | [lez‿ ɑ̃fɑ̃] | 子どもたち(複数) |
vous avez | [vu‿ z ‿ave] | あなたたちは持っている |
un ami | [œ̃‿ n‿ ami] | ある友達/ひとりの友達 |
ils ont | [il‿ z‿ ɔ̃] | 彼らは持っている |
このような組み合わせでは、リエゾンが発音されることがルールになっています。
リエゾンを省略すると、言葉が不完全に聞こえ、ネイティブには違和感があります。
どちらでも良い場合
このケースでは、リエゾン行うかどうかは任意で、文法的にはどちらでも正解です。
リエゾンを行うかどうかのポイントは、フォーマル/カジュアルな場面かで判断します。
- フォーマルな会話やニュースでは使う方が自然
- カジュアルな会話では省略してもOK
つまり、話し方の“雰囲気”を調整するためのリエゾンと言えます。
リエゾンが禁止の場合
「名詞+名詞」、「主語+動詞」、「名詞+形容詞」の場合、リエゾンを行なってはいけません。
間違って発音すると、不自然・文法的に誤りとなり、意味が通らなくなる場合もあります。
語末の子音の発音が変わる
フランス語のリエゾンでは、普段は読まない語末の子音が母音で始まる語と出会ったときに発音されますが、このときスペル通りに読まれるとは限りません。
実は、フランス語のリエゾンには「子音ごとに決まった読み方」があるのです。つまり、「s」や「x」など、同じ綴りでもリエゾン時には別の音に変化することがあります。
語末の子音が s / x の場合 → [z] 音
これは最も頻繁に見られるパターンです。
語末が「s」や「x」で終わる単語の後に母音が続くと、[z] という濁った音でつながります。
- vous avez → [vu ‿z‿ ave](あなたたちは持っている)
- trois amis → [tʁwɑ ‿z‿ ami](3人の友人)
- deux enfants → [dø ‿z‿ ɑ̃fɑ̃](2人の子ども)
語末の子音が d の場合→ [t] の音になる
語末が -d のとき、リエゾンが起きると「t」の音に変わります。これはスペルと音が大きく異なるため、特に注意が必要です。
- grand homme → [grɑ̃ ‿t‿ ɔm](偉大な男)
- second étage → [səgɔ̃‿ t‿ etaʒ](2階)
n → 鼻母音+n音
「n」はリエゾンのときも音は変わらず[n]のままです。
ただし、リエゾンが起きることで「鼻母音+n音」の組み合わせになり、発音にやや注意が必要です。
- un ami → [œ̃ ‿n ‿ami](ある男の友人)
- mon ami → [mɔ̃‿ n‿ ami](私の友人)
アンシェヌマンの注意点と応用
アンシェヌマンとは、フランス語の音声変化の一つで、語末の「もともと発音される子音」が、そのまま次の語の母音とつながって滑らかに発音される現象です。
つまり、「子音で終わる語」と「母音で始まる語」が並ぶとき、音の切れ目を作らずスムーズに発音されます。
単語の間に一瞬の「休止(ポーズ)」がなく、まるで一続きの単語のように聞こえるのが特徴です。
アンシェヌマンは、次のような条件のときに起こります。
どうしてアンシェヌマンがあるの?
フランス語は、音が途切れずに流れるように発音される言語です。
英語や日本語では、語と語のあいだに軽い「区切り(ブレス)」が入ることが多いのに対して、
フランス語では語と語をなめらかに結びつけて「ひとつのまとまり」として読むのが自然な話し方になります。
アンシェヌマンは、まさにその「滑らかさ」を実現するための音声現象なのです。
リエゾンとアンシェヌマンの違い
項目 | リエゾン | アンシェヌマン |
---|---|---|
音の出現 | 通常は発音しない子音が現れる | もともと発音される子音が連結 |
音の変化 | 子音の音が変わる場合がある(d→t、s→zなど) | 音はそのまま、滑らかにつながる |
文法との関係 | ある(強制/任意/禁止) | なし(音の自然な流れ) |
例 | vous avez, un enfant | avec elle, petit ami |
難しさ | 高い(知識と練習が必要) | 慣れで対応しやすい |
まとめ
- フランス語では「音がつながる」ことが当たり前。
- リエゾンは文法的ルールに基づいて子音が現れる現象。強制・任意・禁止の判断が重要。
- アンシェヌマンは、音の自然な連結。聞き取りを難しくするが、発音のコツを掴めばスムーズに話せるようになる。