【フランス語文法#32】中性代名詞 en の使い方

フランス語の中性代名詞 en は、「〜のうちの一部」「〜について」「〜から」などの意味で使われる便利な代名詞です。
数量や部分、de で導かれる語句の代用として、会話でも文章でもよく使われます。
このレッスンでは、en の意味、使い方、そして使う際の注意点を例文とともに学んでいきます。
1. 中性代名詞 en の基本
代名詞 en は、フランス語で前置詞 de を伴う名詞句を繰り返すことなく代用するための語です。
主に次の3つの用法があります。
1-1. 「de + 名詞(物)」の代用
動詞の後に「de + 物」が続くとき、それを en で置き換えることができます。
- Tu parles de ton travail ? → Oui, j’en parle.
(君は自分の仕事について話してるの? → うん、話してるよ)
1-2. 「数量」や「一部」を表す
あるものの数量や一部を取り出して表すときに en を使います。
つまり、名詞と一緒に数詞や量詞がある場合、en を使って名詞を省略します。
- Tu veux du pain ? → Oui, j’en veux.(パンが欲しい? → はい、欲しい)
→ du pain(不特定の量)を en に置き換える。 - J’ai trois stylos. → J’en ai trois.
(私はペンを3本持っている → それを3本持っている)
1-3. 「de + 場所・出所」を代用
de で始まる場所や出所の表現を指すときにも、en を使うことがあります。
- Ils viennent de la bibliothèque. → Ils en viennent.
(彼らは図書館から来た → そこから来た)
2. 前置詞 de の語句の繰り返しを避ける
フランス語では、ある名詞をすでに文の中で使ったあとに、同じ語を再び繰り返すことを避ける傾向があります。
とくに前置詞 de を伴う語句は、繰り返す代わりに en を使うことで、すっきりとした自然な文になります。
- Tu parles de ce livre ?(君はその本について話しているの?)
→ Oui, j’en parle.(はい、それについて話しています)
→ この en は de ce livre(その本について)を指しています。
すでに前の文で何について話しているのかがわかっているため、わざわざ同じ語を繰り返す必要はなく、enで代用するのが自然です。
3. en は「数量」や「一部」を表す
フランス語では、数量や部分を表すときに冠詞 du / de la / des や数詞、量を示す語句(beaucoup, un peu など)と一緒に名詞を使います。
このとき、同じ名詞を繰り返さずに数量だけ残したいときに、en が使われます。
- Tu veux du pain ?(パンが欲しい?)→ Oui, j’en veux.(はい、それが欲しい)
→ ここで du pain(パン)を en に置き換え、「それが欲しい」という意味になります。
さらに数量を明示したい場合は、en のあとに数や量詞を残します。
- Tu as des enfants ?(君には子どもがいるの?)
→ Oui, j’en ai trois.(はい、3人います)
→ en は子どもたち(des enfants)を指し、3人という情報だけを残して伝えています。
4. en は「de + 場所・出所」にも使える
もう一つの使い方として、前置詞 de で導かれる「出所」や「起点となる場所」を代用するケースがあります。
- Ils viennent de la bibliothèque.(彼らは図書館から来た)
→ Ils en viennent.(彼らはそこから来た)
→ この場合の en は de la bibliothèque を指しており、「どこから来たのか」という出発点を簡潔に表現しています。
注意点として、中性代名詞 en はすべての場所表現に使えるわけではありません。
「de」ではなく「à」や「dans」などが使われる場所は、中性代名詞 y を使う必要があります。
- Je viens de l’école. → J’en viens.(出所:en)
- Je vais à l’école. → J’y vais.(目的地:y)
このように、「行き先=y」「出所=en」と覚えておくと整理しやすいです。
5. 対象が「人」の場合は en を使わない
中性代名詞 en は、基本的に「物・場所・数量」など人間以外のものに使われます。
一方で、de の後に「人」が来る場合は、そのままの形で文を保つか、間接目的語代名詞(lui / leur)などを使う必要があります。
- Tu parles de Marie ?(君はマリーの話をしているの?)
→ ◯ Oui, je parle d’elle.(はい、彼女について話してます)
→ × J’en parle.【人を en で指すのは文法的に誤り】
6. en の語順と注意点
en を使うときの語順は、動詞の種類によって変わりますが、以下が基本です。
- 単純時制(現在形・半過去など)→ 動詞の直前に置く
例:J’en veux.(それが欲しい) - 複合時制(複合過去など)→ 助動詞の直前に置く
例:J’en ai mangé.(それを食べた) - 否定文 → 「ne + en + 動詞 + pas」の順になる
例:Je n’en veux pas.(それはいらない)
また、命令形では肯定文と否定文で位置が変わります。
- 肯定命令:動詞 + en
→ Mangez-en !(それを食べなさい!) - 否定命令:ne + en + 動詞 + pas
→ N’en mangez pas.(食べないで!)
7. まとめ
- en は de + 名詞(物)/数量/場所などを指す代名詞で、「それを」「それについて」「そこから」などの意味を持つ。
- 数や量を含む表現では、en を使って名詞を省略しながら数字や量詞は残すことができる。
- 人が対象の場合には en は使えないため注意。
- 代名詞 en の位置は、通常は動詞の前、複合時制では助動詞の前に置く。