Lesson 01|アルファベットと発音の基本

フランス語の発音は、日本語にも英語にもない特徴が多く、学習初期の大きなハードルになります。
まずはアルファベットの読み方から始め、母音や子音、鼻母音、無音字、アクセント記号の役割まで、フランス語らしい音の基本を身につけましょう。
このレッスンでは、正しい発音の土台を作ることを目的とします。
フランス語のアルファベットとは?
フランス語のアルファベットは、英語と同じく26文字で構成されています。
しかし、アルファベットの読み方自体が英語と異なり、さらに文字が単語内でどう発音されるかにもルールが多くあります。
フランス語アルファベット一覧と読み方
アルファベット | 読み方(カタカナ) | 補足・特徴 |
---|---|---|
A | アー | 英語の「ア」と似ているが、やや口を大きく開ける |
B | ベー | 明瞭に「ベー」と発音 |
C | セー | 後ろに a/o/u が続くと「ク」、e/i が続くと「ス」 |
D | デー | 英語より柔らかく発音 |
E | ウー / エゥ | 単独で読むと「ウー」寄り、単語内では多様な音に変化 |
F | エフ | 英語とほぼ同じ |
G | ジェー | 後ろに a/o/u なら「グ」、e/i なら「ジュ」 |
H | アッシュ | 発音しない(無音子音) |
I | イー | 日本語の「イ」と近いがやや鋭い |
J | ジー | 「ジュ」のような音(日本語の「ジ」とは異なる) |
K | カー | フランス語起源ではあまり使われない |
L | エル | 舌先を歯茎につけて発音 |
M | エム | 英語とほぼ同じ |
N | エヌ | 鼻に抜ける音にもつながる(鼻母音の要素) |
O | オー | 口を丸くして発音 |
P | ペー | 明確に「ペー」 |
Q | キュー | 後ろに u が続き、実際には「ク」と読むことが多い |
R | エール | フランス語独特の喉の音、発音習得には時間がかかる |
S | エス | 単語の間にあると「ズ」の音になることもある |
T | テー | 英語の「t」より柔らかめ |
U | ユー | 唇をすぼめて「イ」と「ウ」の間の音 |
V | ヴェー | 有声音、英語と同じ「ヴ」音 |
W | ドゥーブル・ヴェー | 英語の w に近いが、発音に注意(外来語に多い) |
X | イクス | 語末では「クス」、語中では「グズ」のようになることも |
Y | イグレック | 母音として扱う。i の変化形。単語では「イ」と発音 |
Z | ゼッド | 英語より歯擦音が強いこともある |
ポイント解説
単語とアルファベットの発音実例
単語 | 発音(IPA) | 解説 |
---|---|---|
Bonjour | [bɔ̃ʒuʁ] | b=[b]、ou=[u]、r=喉音 [ʁ]。bon の「on」は鼻母音 [ɔ̃]。 |
Merci | [mɛʁsi] | e=[ɛ](開いたエ)、r=[ʁ]、i=[i]。発音変化が多い単語。 |
École | [ekɔl] | é は明瞭な「エ」。語末の e は軽く読む/無音。強勢は語末。 |
Chat | [ʃa] | ch は [ʃ](シ)。英語の「チャット」と異なる点に注意。 |
Ville | [vil] | ll=[l]。語末の e はほぼ発音されないが、次に続く語によりリエゾンすることがある。 |
単語の末尾は「書いてあるけど読まない」が基本
フランス語は、つづり(スペル)と発音がある程度規則的に対応している言語です。
たとえば「ch=シ」「ou=ウ」「oi=ワ」などの綴りごとの読み方ルールが比較的安定しているため、ルールを覚えれば知らない単語も「読める」という利点があります。
しかしその一方で、実際に「発音しない文字」や「つづりと異なる音」も多く、例外も目立ちます。
語末の子音
多くのフランス語単語では、語末の子音が発音されません。
これは日本語や英語の感覚と大きく異なる点で、最初は違和感を持ちやすいところです。
- paris → [paʁi](パリ) ← 最後の s は読まない
- petit → [pəti](小さい) ← t は読まない
- grand → [gʁɑ̃](大きい) ← d は読まない(鼻母音とセット)
ただし、次に母音で始まる単語が来る場合は「リエゾン」と呼ばれる音の連結が発生し、本来読まない音が発音されることがあります。
- les enfants → [lez‿ɑ̃fɑ̃](子どもたち)※z が発音される
→リエゾンは今後のレッスンで詳しく学びます
語末のe (無音 e / e muet)
フランス語の単語には語末に「e」がつくものが非常に多くありますが、この語末の e は、通常ほとんど発音されません。
この発音しない「e」のことを、e muet(ウ・ミュエ)=「無音の e」と呼びます。
単語 | 意味 | 発音 | 解説 |
---|---|---|---|
fille | 女の子 | [fij] | e は発音しない |
table | テーブル | [tabl] | e は無音、語尾の子音は残る |
H(アッシュ)= 見えても完全に無視する文字
フランス語の h(アッシュ)は、単語の頭にあっても絶対に発音されない文字です。英語では「ハ」の音として発音されますが、フランス語では完全に“沈黙”します。
実例で見てみましょう。
- homme(男) → 発音:[ɔm] → h は読まず、「オム」と発音します。
- hôtel(ホテル) → 発音:[otɛl] → h はまったく発音されず、oから始まるように「オテル」と読む。
2種類の”H”
実は、h には2つのタイプがあります。それは「無音のアッシュ(H)」と「有音のアッシュ(H)」です。
どちらも発音しない点では同じですが、「リエゾンが起こるかどうか」が違います。
種類 | 名称 | 特徴 | 例 |
---|---|---|---|
無音の h | 無音のアッシュ | 母音と同じ扱い → リエゾン可 | homme, hôtel など |
有音の h | 有音のアッシュと呼ばれるが、発音はしない | リエゾンをしない | haricot(インゲン豆), héros(英雄)など |
鼻母音(母音+n/m)に注意
フランス語には、日本語にない「鼻母音」があります。
これは母音の後ろに n / m が続くとき、口と鼻を同時に使って出す独特な音です。
「口の後ろ半分+鼻」で響かせるイメージです。
綴り | 音記号 | 例語 | 発音 |
---|---|---|---|
an, en | [ɑ̃] | enfant(子ども) | アン/アンファン |
on | [ɔ̃] | bon(良い) | ボン |
in, ain | [ɛ̃] | vin(ワイン) | ヴァン |
un | [œ̃] | un(1つの) | アン(ウァンに近い音) |
アクセント記号の役割と発音への影響
フランス語では、文字に付いたアクセント記号が意味だけでなく、発音も左右する重要な要素です。
記号 | 名前 | 読み方の変化 | 例語 |
---|---|---|---|
é | アクサン・テギュ | はっきりと「エ」 | école(学校) |
è | アクサン・グラーヴ | やや開いた「エ」 | très(とても) |
ê | アクサン・シルコンフレックス | 長めの「エー」 | fête(祭り) |
ë | トレマ | 子音の間の母音を区切る | Noël(ノエル) |
ç | セディーユ | c を「ス」と読ませる | français(フランス語) |
まとめ
- フランス語のアルファベットは英語と同じ26文字だが、読み方・発音方法は大きく異なる。
- 語末の子音は多くの場合発音しない。ただしリエゾンなど例外もある。
- 語末のeも、基本的には書いてあっても発音されない。
- 語頭のアッシュ(h)は発音はされないが、リエゾンの有無で区別あり。
- アクセント記号付きの文字は、発音と意味の両面で重要。記号のない文字とは異なる発音になるため要注意。