コラム

#20 フランス語が英語に与えた影響|フランス語コラム

image
Izumi
This article contains affiliate links to recommended products.

英語を学んでいると、フランス語に似た単語に出会うことがあります。

たとえば、restaurant、ballet、cuisine、menu などは英語の中でもよく使われる語ですが、いずれもフランス語と深い関係があります。

英語を理解するうえでも、フランス語の影響を知ることは大切です。なぜなら、現代英語の語彙にはフランス語に由来する語が数多く含まれているからです。

この記事では、フランス語が英語に与えた影響について、歴史的背景や現代英語に残るフランス語由来の表現について解説します。

1. ノルマンコンクエストによる影響

フランス語が英語に大きな影響を与えた最大のきっかけは、1066年に起こったノルマン・コンクエストです。

この年、現在のフランス北西部にあったノルマンディー公国の公爵ウィリアム(後の「ウィリアム1世」)は、イングランドへ侵攻し、ヘイスティングズの戦いでイングランド王ハロルド2世を破りました。こうしてウィリアムはイングランド王となり、ノルマン人による新しい支配体制が始まりました。

ノルマン人はもともと北欧系の人々でしたが、ノルマンディーに定住してからはフランス語の一種であるノルマン・フランス語を話すようになっていました。そのため、王室や貴族、行政官など、新たな支配階級の共通語はフランス語となりました。

一方で、大多数の一般市民は、それまでどおり古英語を話し続けていました。

その結果、中世イングランドでは支配階級はフランス語、一般の人々は英語(古英語)という二つの言語が共存する社会が生まれたのです。

2. 支配階級の言語としてのフランス語

ノルマンコンクエストの後、フランス語はイングランドの支配層が使用する言語になりました。一方で、農民や職人、商人など一般の人々は古英語を話し続けていました。

このように、中世イングランドでは社会階級によって使用される言語が異なるという状況が数世紀にわたって続きました。

この二言語社会の中で、支配階級が使用するフランス語の語彙は、次第に英語へ取り入れられていきました。

特に、次のような政府や法律、軍事、貴族社会に関する言葉は、フランス語から借用されたものが数多くあります。

  • government(政府)
  • court(裁判所・宮廷)
  • judge(裁判官)
  • justice(司法・正義)
  • parliament(議会)
  • crown(王権)
  • royal(王室の)
  • army(軍隊)

これらは現在では英語の基本語彙として定着していますが、その多くはノルマンコンクエスト後に英語へ取り入れられたものです。

こうした単語を見ると、フランス語の影響が単なる語彙の借用にとどまらず、社会制度や文化とも強く結びついていたことがわかります。

3. 動物と肉の名前に見られるフランス語の影響

フランス語が英語に与えた影響を説明する際によく挙げられるのが、動物と肉の名前の違いです。

英語では以下の例のように、生きている動物を表す単語と食卓に並ぶ肉を表す単語が異なることがあります。

  • cow(牛):beef(牛肉)
  • pig(豚):pork(豚肉)
  • sheep(羊):mutton(羊肉)
  • calf(仔牛):veal(仔牛肉)

興味深いのは、動物そのものを表す cow、pig、sheep などは古英語(ゲルマン系)の語である一方、beef、pork、mutton、veal はいずれもフランス語(より正確にはノルマン・フランス語)に由来していることです。

このような語彙の違いは、中世イングランドの社会構造を反映していると考えられています。

ノルマン征服後、家畜の飼育を担っていた農民の多くは英語を話していたため、動物には英語本来の名前が使われ続けました。一方、宮廷や貴族階級ではフランス語が使われており、料理として提供される肉はフランス語由来の名前で呼ばれるようになりました。

つまり、農民は cow を育て、貴族は beef を食べていたという状況が、現在の英語にも反映されているのです。

もちろん、このような対応がすべての動物に当てはまるわけではありませんが、この例は、英語とフランス語が長期間共存した歴史を象徴するものとしてよく紹介されます。

4. フランス語の影響は英語の文体を豊かにした

フランス語からの借用語は、英語の語彙を増やしただけではありません。英語の文体や表現の幅にも大きな影響を与えました。

現代英語には、同じような意味を表す単語でも、ゲルマン系(英語本来の語)とフランス語・ラテン語系の語が共存しているケースが数多くあります。

例を挙げると、ask / inquire、help / assist、begin / commence はいずれも似た意味を持っていますが、使われる場面や与える印象には違いがあります。

  • ask:「尋ねる」という日常的な表現
  • inquire:「問い合わせる」という改まった表現
  • help:「助ける」という一般的な表現
  • assist:「支援する」というやや形式的な表現
  • begin:「始める」という口語的な表現
  • commence:「開始する」という公式な表現

一般的に、英語本来の語は日常会話でよく使われる表現に多いです。一方で、フランス語やラテン語に由来するロマンス語系の語は、公的な文書や学術論文、法律、ビジネスなどで使われる傾向があります。

このように、ノルマン征服以降フランス語由来の語が英語に大量に取り入れられた結果、英語は同じ内容でも、親しみやすい文章から格式の高い文章まで、目的に応じて表現を柔軟に変えられる言語になりました。

この語彙の選択肢の多さこそが、英語の表現力を豊かにしている大きな理由の一つと言えます。

5. まとめ

フランス語は英語に大きな影響を与えてきた言語です。

1066年のノルマンコンクエストをきっかけに、政治、法律、行政、料理、芸術、ファッション、文学など、多くの分野に広がりました。

たとえば、英語には以下のように、現在でも多くのフランス語由来の語が残っています。

  • government(政府)
  • court(裁判所)
  • justice(司法・正義)
  • restaurant(レストラン)
  • cuisine(料理)
  • boutique(ブティック)
  • liberty(自由)

また、フランス語の影響によって、英語には日常的な語とフォーマルな語が並ぶ豊かな語彙体系が生まれました。

フランス語が英語に与えた影響を知ることは、フランス語そのものを理解するだけでなく、英語の成り立ちの理解にもつながります。

そのため、フランス語は英語の歴史と語彙を理解するためにも欠かせない言語だと言えます。

記事URLをコピーしました