フランス語の代名動詞の4つの用法|意味と用法まとめ

フランス語には、動詞の前に「再帰代名詞(me, te, seなど)」がつく代名動詞という文法があります。
これは「自分自身に対する行為」や「互いに行う行為」を表すほか、「〜される」という受け身や、特定の意味をもつ表現にも使われます。
今回は代名動詞の用法(再帰的・相互的・受動的・本質的)を整理しながら、それぞれの使い方と特徴を具体的に解説していきます。
1. 代名動詞とは?
1-1. 代名動詞の基本構造
代名動詞とは、再帰代名詞(me, te, se, nous, vous, se)を動詞の前に置いた構文です。
再帰代名詞は主語と一致し、「自分自身に〜する」「お互いに〜する」「〜される」など、さまざまな意味を表現します。
代名動詞は、辞書では「se + 動詞の原形」という形で記載されます。
- se laver(自分自身を洗う)
- se réveiller(目を覚ます)
- s’appeler(〜と名乗る)
そして、再帰代名詞の 「se」は主語によって次のように変化します。
主語 | 再帰代名詞 | 例(se laver) |
---|---|---|
je | me | je me lave(私は体を洗う) |
tu | te | tu te laves(君は体を洗う) |
il / elle / on | se | il se lave(彼は体を洗う) |
nous | nous | nous nous lavons(私たちは体を洗う) |
vous | vous | vous vous lavez(あなたは体を洗う) |
ils / elles | se | ils se lavent(彼らは体を洗う) |
1-2. 代名動詞と再帰動詞の違い
押さえておきたいのが、「代名動詞」と「再帰動詞」という2つの用語の違いです。
- 代名動詞は、文法上の分類名であり、動詞の前に再帰代名詞(me, te, se, nous, vous)がついた構造になっている動詞全般を指します。
- 再帰動詞は、「代名動詞」の中のひとつの用法タイプであり、主語が自分自身に動作を向ける場合をいいます。
つまり、代名動詞は「再帰代名詞 se + 動詞」の形式を取る動詞の総称です。
そして再帰動詞は代名動詞の用法の1つであり、主語が自分自身に動作を向ける動詞を指します。
2. 代名動詞の用法解説
2-1. 再帰的用法:「自分に〜する」
再起的用法は、最も基本的な用法です。「自分に〜する」という意味となり、主語と動作の対象が一致しているのが特徴です。
主語が自分自身に対して動作を行う場合、再帰代名詞が必要になります。
- Je me lave.
(私は自分の体を洗う) - Elle se réveille à 6 heures.
(彼女は6時に目覚める) - Nous nous habillons rapidement.
(私たちは素早く着替える)
英語にすると “myself”、“yourself” などが対応します。
ただし日本語訳では「自分を〜」と明示しないことが多く、文法的な再帰を意識して理解する必要があります。
2-2. 相互的用法:「お互いに〜する」
主語が複数のとき、互いに対して行う動作を表す用法です。英語の “each other”に近い表現です。
- Ils se regardent.
(彼らは見つめ合っている) - Nous nous écrivons chaque semaine.
(私たちは毎週手紙を送り合う) - Elles se parlent au téléphone.
(彼女たちは電話で話し合う)
ポイントは、主語が複数形であることと、「〜し合う」という意味合いが生まれることです。
2-3. 受動的用法:「〜される」
この用法では、代名動詞が実質的に受動態(〜される)の意味になります。
行為者を明示しない状況や、物や状況の変化を表すときに使われます。
- La porte se ferme toute seule.
(ドアはひとりでに閉まる) - Le problème se résout facilement.
(その問題は簡単に解決される) - Ce livre se lit bien.
(この本は読みやすい)
ここでは、再帰代名詞が「自分自身を〜する」という意味を持つわけではなく、「〜される」という意味合いが前面に出ます。
特に日常会話やニュース文体で多用される自然な表現です。
2-4. 本質的用法:常に se が必要な動詞
本質的用法の動詞は、常に「se」を伴う形でのみ存在する動詞を指します。
つまり、動詞単体で使う形が存在しないため、もはや再帰性の意味も薄く、構造として定着している慣用動詞といえます。
以下が、本質的用法の代表的な代名動詞です。
- se souvenir de ~(~を覚えている)
- se méfier de ~(~を警戒する)
- s’en aller(立ち去る)
- se moquer de ~(~をからかう)
souvenir や moquer のように、「se」のない形では動詞として存在せず、辞書でも常に「se souvenir」「se moquer」として収録されています。
意味の上では再帰的でも受動的でもないため、構文として丸ごと覚える必要があります。
3. まとめ
- 代名動詞は「再帰代名詞+動詞」の構造で、文の主語や文脈によって4つの用法に分かれる。
- 再帰的用法:自分自身に対する行動(例:se laver)
- 相互的用法:複数主語が互いに行う行動(例:se rencontrer)
- 受動的用法:自然・自動的な受け身(例:se fermer)
- 本質的用法:常に se を伴い、非代名形が存在しない(例:se souvenir)