フランス語の接続法半過去|使い方とルール解説

フランス語の「接続法半過去」は接続法の一種で、過去の文脈で従属節に使われる時制です。
ただし、現代フランス語ではほとんど使われず、会話や通常の文章では「接続法現在」で代用されます。
とはいえ、小説、戯曲、古典文学、法律文などを読む際には目にするため、読解力を高めるためにはその仕組みを理解しておくことが大切です。
今回は接続法半過去の形の作り方と用法を解説します。
1. 接続法半過去の役割
接続法は「感情・願望・疑念・必要・判断」などを表すときに従属節で使われます。
現代フランス語では主に接続法現在が使われますが、主節が過去時制の場合、文語的には従属節も過去に合わせて接続法半過去が用いられることがあります。
- Il voulait que je parlasse.
(彼は私が話すことを望んでいた) - Elle doutait qu’il fût honnête.
(彼女は彼が正直であるかどうか疑っていた)
ただし、実際の会話では parle / soit を用いて接続法現在で表現するのが一般的です。
つまり、接続法半過去は「形式上の時制の一致」や「文学的な格調」を表すために使われると考えると理解しやすいです。
2. 接続法半過去の作り方
接続法半過去は、「直説法単純過去の3人称複数の語幹 + 接続法半過去語尾」で作ります。
接続法半過去の語尾
- -sse
- -sses
- -^t(アクセント付きの t)
- -ssions
- -ssiez
- -ssent
例:parler(話す):単純過去:ils parlèrent → 語幹 parl-
- que je parlasse
- que tu parlasses
- qu’il/elle parlât
- que nous parlassions
- que vous parlassiez
- qu’ils/elles parlassent
例:finir(終える):単純過去:ils finirent → 語幹 fin-
- que je finisse
- que tu finisses
- qu’il/elle finît
- que nous finissions
- que vous finissiez
- qu’ils/elles finissent
例:avoir(持つ):単純過去:ils eurent → 語幹 eu-
- que j’eusse
- que tu eusses
- qu’il/elle eût
- que nous eussions
- que vous eussiez
- qu’ils/elles eussent
例:être(〜である):単純過去:ils furent → 語幹 fu-
- que je fusse
- que tu fusses
- qu’il/elle fût
- que nous fussions
- que vous fussiez
- qu’ils/elles fussent
3. 接続法半過去の用法
3-1. 時制の一致による用法
主節が過去時制のとき、従属節に接続法半過去が対応します。
- Il fallait qu’elle réussît.
(彼女は成功しなければならなかった)
現代フランス語では、“Il fallait qu’elle réussisse.” と、接続法現在を使うことが多いです。
3-2. 文学的・格式ばった表現
小説や戯曲では、過去の場面描写で格調高い調子を出すために接続法半過去が用いられます。
- Il parlait comme s’il fût roi.
(彼はまるで王であるかのように話した)
3-3. 文語的な条件文
古典文学では、条件法過去と組み合わせて用いられることがあります。
- Si j’eusse su, je ne serais pas venu.
(もし知っていたなら、来なかっただろう)
現代フランス語では “Si j’avais su, je ne serais pas venu.“ と表すのが一般的です。
4. 接続法現在との違い
接続法半過去と接続法現在は、意味の点ではほとんど差がありません。違いは時制と文体にあります。
- 接続法現在:現代フランス語の標準。会話・一般的な文章で使用。
- 接続法半過去:文学・古典・法律文など文語でのみ使用。
現代のフランス語では、接続法半過去を使うケースはほとんどありません。あくまで読解力強化のために、余裕があるときに学習すれば大丈夫です。
その際、頻出動詞(être, avoir, faire, dire, aller, venir など)の接続法半過去だけでも押さえておくと便利です。
5. まとめ
- 接続法半過去は、接続法の過去時制の1つで、文語的に時制の一致を表すときに使われる。
- 主に文学作品や古典に登場し、現代では接続法現在で代用される。
- 作り方は「単純過去の3人称複数の語幹 + 接続法半過去語尾」。
- 意味は接続法現在と大きく変わらないが、文体的に格式を高める役割がある。
- 学習では「使う」のではなく「読んで理解する」ことを目的にする。