【初中級文法⑩】中性代名詞 y の使い方

フランス語の中でよく使われる代名詞 y(イ)は、「そこに」「それに」などの意味を持ちます。
会話や文章の中で繰り返しを避けたいときや、簡潔に表現したいときにとても便利な要素です。
一方で、使い方を間違えやすい点も多いため、基本的な用法を正しく理解することが大切です。
このレッスンでは、中性代名詞 y の仕組み、使いどころ、注意点などを具体的に学んでいきます。
中性代名詞 y とは?
フランス語の中でよく使われる中性代名詞 y は、場所を指したり、「à + 名詞」などを繰り返さずに表現できる便利な言葉です。英語で言えば there や to it に近い意味になります。
中性代名詞 y を使うことで、すでに出てきた情報を繰り返さずに指し示すことができます。
主に以下の2つのパターンで使われます。
「場所」を指す y
à, chez, dans, sur, en などの前置詞のあとに来る、場所を示す名詞を、y に置き換えることができます。
- Je vais à Paris. → J’y vais.
→ à Paris(パリに)という場所を y に言い換えて、「そこへ行く」という意味になります。 - Tu restes chez ton ami ? → Oui, j’y reste.
→ chez ton ami(君の友達の家に)を y で指し、「そこにとどまる」という意味になります。
このように中性代名詞 y を使うことで、同じ単語が繰り返されることなく、自然でスムーズな文章を作ることができます。
「à + 名詞(物)」を指す y
ある動詞の後に「à + 名詞(もの)」が続く場合、その部分を y に置き換えることができます。
- Elle pense à son avenir. (彼女は自分の将来について考えている)
- Elle y pense.(彼女はそれ[à son avenir]について考えている)
ここでのポイントは、対象が「人」ではなく「物」であることです。
対象が人の場合は y ではなく、間接目的代名詞 lui(彼/彼女に)または leur(彼ら/彼女らに)を使います。
- × Je parle à Marie. → Je y parle.(Marieは場所ではなく人なので誤り)
- ◯ Je parle à Marie. → Je lui parle.(Marieを lui に置き換えて使用)
例文と解説
Je vais à Paris. → J’y vais.(私はパリに行く。→ そこに行く)
à Paris は「場所」を表す前置詞句。y に置き換えることで、「行き先がパリである」という情報を簡潔に繰り返せます。文全体の意味は「そこに行く」になります。
Ils sont dans la salle. → Ils y sont.(彼らは部屋にいる。→ そこにいる)
dans la salle は「部屋の中に」という場所を示す語句です。y にすることで「その場所にいる」という意味が伝わります。
Elle pense à son travail. → Elle y pense.(彼女は自分の仕事について考えている。→ それについて考えている)
penser à は「〜について考える」という意味。à son travail は物なので y で置き換え可能。話題を繰り返さずスムーズに表現できます。
Tu réponds à la question ? → Oui, j’y réponds.
(君はその質問に答えるの?→ はい、答えます)
répondre à は「〜に答える」。対象が物(質問)なので y を使えます。人が対象の場合は lui / leur を使う必要があります。
Nous pensons à l’avenir. → Nous y pensons.(私たちは未来について考えている。→ それについて考えている)
penser à の目的語が l’avenir(未来)= 物なので y が使えます。主語が複数でも位置や使い方は変わりません。
文法のポイント解説
y は「場所」や「物」に対して使う
フランス語で代名詞 y を使う第一の場面は、どこかの場所をもう一度指したいときです。
たとえば、会話の中で一度「パリに行く」という話題が出たあと、それを繰り返したくないときに y を使って言い換えることができます。
- Tu vas à Paris cet été ?(君はこの夏パリに行くの?)
- Oui, j’y vais en août.(うん、8月に行くよ)
このように、すでに出てきた場所 à Paris(パリへ)を y に置き換えることで、会話が自然かつコンパクトになります。
また、場所を表す前置詞は「à」だけではありません。
chez(〜の家に)、dans(〜の中に)、sur(〜の上に)なども y の対象になります。
- Il est dans la salle. → Il y est.(彼はその部屋にいる)
- Je reste chez mes parents. → J’y reste.(私は両親の家にいる)
つまり、場所を再度指すとき、「そこに」「そこへ」「そこで」といった意味を表すのが y の基本です。
y は「à + 物」にも使える
次に、y が使えるもう一つの重要な文脈が、「à + 物(=事柄)」です。
フランス語には、「à + 名詞(物)」を目的語として取る動詞が多数あります。たとえば:
- penser à(〜について考える)
- répondre à(〜に答える)
- s’intéresser à(〜に興味がある)
- s’habituer à(〜に慣れる)
- réfléchir à(〜について熟考する)
これらの動詞の後ろに来る名詞が「物や事柄」の場合、それを y に置き換えることができます。
- Elle pense à son avenir.(彼女は自分の将来について考えている)
→ Elle y pense.(それについて考えている) - Tu t’intéresses à la politique ?(君は政治に興味あるの?)
→ Oui, je m’y intéresse.(うん、興味あるよ)
y の位置に注意
フランス語では、代名詞(y, le, lui など)は動詞の直前に置かれるのが原則です。
- Je vais à Paris. → J’y vais.
- Elle pense à son travail. → Elle y pense.
一方、複合過去など「助動詞 + 過去分詞」という構造になる場合、助動詞の前に y を置く必要があります。
- Tu es allé au marché ? → Oui, j’y suis allé.(君は市場に行ったの?→うん、行ったよ)
さらに命令形の場合は位置が変わり、動詞の後ろに y を付けます
- Va à l’école ! → Vas-y !(学校へ行け!)
このように、文の形に応じて y の置き場所が変わることも、初級〜中級でよく問われるポイントです。
まとめ
- 代名詞 y は「場所」や「à + 物」を指すときに使う。意味は「そこに」「それに」。
- 対象が人の場合は使えず、lui / leur を使う。
- y は原則として動詞の前に置く。複合時制では助動詞の前。
- 繰り返しを避けて文をすっきりさせるために非常に役立つ。
- 使えるパターンを文法的に理解し、例文で自然に慣れていくことが習得の近道。