【フランス語文法#18】前置詞の役割と使い方

フランス語の「前置詞」は、名詞の前に置かれ、場所や方向、位置関係を表す重要な要素です。
英語学習者には馴染み深いものも多いですが、フランス語では前置詞の後に冠詞が必要であるなど、独自のルールがあります。
「dans(〜の中に)」「sur(〜の上に)」「sous(〜の下に)」などの基本前置詞は、身の回りの物や人の位置を表す際に不可欠です。
今回はこれらの前置詞の意味と使い方、使い分けの感覚を、具体例を通して解説します。
1. 前置詞とは?
前置詞とは、名詞や代名詞の前に置かれて、それが文中で「どのような役割を果たしているのか」を示す語です。
日本語の「〜の中に」「〜と」「〜までに」などに相当し、フランス語では非常に頻繁に使われる文法要素です。
そして、前置詞の後ろには、「冠詞+名詞」が続くのが原則です。
前置詞はフランス語において非常に多様で、場所・時間・原因・手段など、さまざまな意味を表すことができます。
ここでは、使用頻度の高い前置詞を分類して紹介します。
1-1. 場所の前置詞
前置詞 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
dans | 〜の中に | dans la maison(家の中に) |
sur | 〜の上に | sur la table(テーブルの上に) |
sous | 〜の下に | sous le lit(ベッドの下に) |
devant | 〜の前に | devant l’école(学校の前に) |
derrière | 〜の後ろに | derrière la porte(ドアの後ろに) |
entre | 〜の間に | entre les deux arbres(2本の木の間に) |
près de | 〜の近くに | près de la gare(駅の近くに) |
loin de | 〜から遠くに | loin de la ville(町から遠くに) |
1-2. 時間・期間の前置詞
前置詞 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
à | 〜に(時刻) | à 8 heures(8時に) |
en | 〜で(所要時間)/〜に(月・年など) | en avril(4月に) en deux jours(2日で) |
dans | 〜後に(未来の起点) | dans une heure(1時間後に) |
depuis | 〜から(継続中) | depuis 2020(2020年から) |
pendant | 〜の間(期間) | pendant deux semaines (2週間の間) |
jusqu’à | 〜まで | jusqu’à 18h(18時まで) |
1-3. 原因・理由の前置詞
前置詞 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
à cause de | 〜のせいで(否定的) | à cause de la pluie (雨のせいで) |
grâce à | 〜のおかげで(肯定的) | grâce à toi(君のおかげで) |
par | 〜によって(動機や手段) | par fatigue(疲労のために) |
1-4. 手段・所属・方法の前置詞
前置詞 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
avec | 〜と一緒に/〜を使って | avec un ami(友人と一緒に)avec une clé(鍵を使って) |
sans | 〜なしで | sans problème(問題なく) |
en | 〜で(手段・方法) | en voiture(車で) en silence(静かに) |
de | 〜の(所属・材料など) | le livre de Marie(マリーの本)un verre de vin(ワイン一杯) |
à | 〜の(所有・目的) | la maison à vendre (売り出し中の家) |
2. dans / sur / sous の空間イメージをつかむ
dans / sur / sous の前置詞の理解には、視覚的・空間的な感覚が大切です。
単語の意味だけでなく、どのように物が配置されているかをイメージしながら覚えましょう。
2-1. dans :何かに囲まれた中にある
- Le stylo est dans mon sac.(ペンは私のカバンの中にある)
2-2. sur :表面の上に載っている
- Le chat dort sur le lit.(猫がベッドの上で寝ている)
2-3. sous :「下に潜っている/覆われている」ような状態
- Il y a de la poussière sous le canapé.(ソファの下にホコリがある)
3. 前置詞の後ろには「冠詞+名詞」が必要
フランス語では前置詞だけでは文が成立せず、その後に「冠詞(le, la, les など)+名詞」を続ける必要があります。これが英語との大きな違いです。
- sur la table(テーブルの上に)
- dans le sac(カバンの中に)
一部の冠詞と前置詞は、融合して au(à + le) や du(de + le) のように変化する「縮約」が起きます。
4. être と il y a の使い分け
位置を表すときに用いられる代表的な構文が、être と il y a です。
項目 | être | il y a |
---|---|---|
意味の焦点 | どこにあるか(場所) | 存在するかどうか(有無・存在) |
主語 | 既知の名詞(具体的なもの) | 不特定のもの(初出の名詞が多い) |
文の役割 | 物や人の位置を説明する | 物や人の存在を知らせる |
使用例 | Le livre est sur la table. (その本はテーブルの上にある) | Il y a un livre sur la table. (テーブルの上に本が1冊ある) |
4-1. être (〜にある/〜にいる):「場所」に焦点
être は、既に話し手・聞き手が共通で理解している「その物・人」がどこにあるかを説明します。
主語は、「具体的な物や人」になります。
- Où est le chat ? → Le chat est sous la table.
(猫はどこ? → その猫はテーブルの下にいる)
4-2. il y a(〜がある/〜がいる):「存在」に焦点
「何かがある/誰かがいる」という事実・存在そのものを述べます。
主語は「新しい情報/まだ特定されていないもの」になります。
- Qu’est-ce qu’il y a sous la table ? → Il y a un chat sous la table.
(テーブルの下に何があるの? → 猫が1匹いるよ)
5. まとめ
- 前置詞は、名詞とセットで位置・方向・空間関係を示す語。
- 「dans(〜の中)」「sur(〜の上)」「sous(〜の下)」など、日常で頻出するものはまず覚える。
- 前置詞の後ろには必ず「冠詞+名詞」を置く必要がある。
- être と il y a の使い分けを意識する。