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【フランス語文法#69】直説法前過去

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Izumi

直説法前過去は、過去の出来事を語るときに「ある過去の出来事よりもさらに前に完了していた動作」を表すための時制です。

会話で使う直説法大過去と近い意味を持ちますが、直説法前過去は「書き言葉の大過去」にあたります。そのため、前過去は主に文学や歴史的叙述の中で使われます。

今回は、書き言葉専用の複合時制である直説法前過去について、その構造や使い方、注意点などを解説していきます。

1. 直説法前過去の構造

直説法前過去は、主に文学や歴史的叙述の中で使われる複合時制です。小説や歴史的な叙述で、ある過去の出来事よりさらに前の出来事を表すために使われます。

そして直説法前過去は「助動詞 avoir / être の単純過去形 + 過去分詞」の形で構成されます。

  • J’eus mangé.(私は食べ終えていた)
  • Il fut parti.(彼はすでに出発していた)

助動詞の選び方は複合過去や大過去と同じで、移動を表す一部の動詞(aller, venir, naître, mourir など)や再帰動詞は être を使います。

2. 過去の出来事の順序を明確にする

前過去は、ある出来事が別の過去の動作よりも前に完了していたことを表します。

  • Quand il arriva, elle eut déjà terminé son travail.
    (彼が到着したとき、彼女はすでに仕事を終えていた)

「彼の到着」よりも前に「彼女が仕事を終える」という出来事が起こっているため、前過去を使い「時系列」を明確にしています。

3. 文学や歴史的叙述での使用

歴史や物語の描写において、過去の事実関係をより正確に伝えるために使われます。

  • Après qu’il fut parti, le silence régna dans la maison.
    (彼が出発した後、家には静けさが広がった)

「静けさが広がった」という出来事の前に、「彼が出発したこと」が完了している点を前過去で表しています。

4. 直説法前過去と大過去の違い

直説法前過去と直説法大過去は「ある過去の出来事よりも前の出来事」を表す点では同じですが、使用される場面が異なります。

項目直説法前過去大過去
構造助動詞の単純過去形+過去分詞助動詞の半過去形+過去分詞
用途書き言葉(文学、歴史的叙述)話し言葉、日常会話
ニュアンス格式ばった、叙述的自然、日常的
頻度現代では読解中心会話・文章の両方で使用

直説法前過去は会話では使うことのない時制ですが、小説や歴史的文章には頻繁に登場します。

特に、同じく書き言葉専用の「直説法単純過去」とセットで使われることが多いので、両者を関連づけて覚えると理解しやすくなります。

5. まとめ

  • 直説法前過去は「助動詞の単純過去形+過去分詞」で作られる複合時制。
  • 意味は大過去と同じで「過去のある時点より前に完了していた動作」を表す。
  • 用途は文学・歴史・新聞記事などの書き言葉限定。
  • 会話では大過去が使われるため、直説法前過去は読解用に理解しておく。
  • 学習の際は、まず avoir / être の単純過去形を確実に身につけることがポイント。

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泉(Izumi)
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