【フランス語文法#70】不定代名詞 on

フランス語の不定代名詞 on は、会話でも文章でも非常によく使われる表現です。
直訳が難しいため、日本語では「人は〜する」「私たちは〜する」「誰かが〜する」など、文脈に応じて意味が変わります。
日常会話においては「私たち」を表すことが多く、親しい会話の中では nous(私たち)の代わりに使われることも一般的です。
今回は不定代名詞 on の基本的な意味と用法、そして注意点を詳しく解説します。
1. on の基本的な用法
1-1. 一般的な人々を表す
不定代名詞 on は、普遍的な真理や社会的な事実を述べるときに使われます。日本語の「人は〜する」に近いニュアンスです。
- On vit plus longtemps aujourd’hui qu’auparavant.
(今日では昔より長生きする) - On dit que le café est bon pour la santé.
(コーヒーは健康に良いと言われている)
ここでの on は「人々」を指しており、話し手も聞き手も含まない漠然とした主語です。
1-2. 不特定の「誰か」を表す
主体が特定されていない、または言及したくない場合に on を使います。
- On a volé mon sac !(誰かが私のカバンを盗んだ!)
- On frappe à la porte.(誰かがドアをノックしている)
英語の someone に近い使い方です。
1-3. 「私たち」を表す
on は「私たちは〜」という意味もあり、口語では nous よりも on の方が圧倒的に多く使われます・
- On y va ?(行こうか?)
- On a gagné le match !(私たちは試合に勝った!)
この場合の on は「あなたと私」のように、第三者を排除した完全な「私たち」を意味しており、親しい間柄の会話で登場します。
2. on は常に三人称単数の動詞をとる
on は意味が「私たち」になることがあっても、文法的には三人称単数として扱われます。
そのため、動詞は常に三人称単数形を使わなければなりません。
- On parle français ici.(ここではフランス語が話されている)
- On va au cinéma ce soir ?(今夜、映画に行かない?)
どちらの文でも動詞は parle / va と、三人称単数形になっています。
3. 所有形容詞は notre / nos を使う
on が「私たち」を意味する場合、所有形容詞は一人称複数と同じ notre / nos を用います。
- On aime notre maison.
(私たちは自分たちの家が好きだ) - On prépare nos valises.
(私たちは自分たちのスーツケースを準備している)
このように、動詞は三人称単数、所有は一人称複数という「ハイブリッド的な使い方」になる点が特徴的です。
4. on と nous の違い
nous も「私たち」を意味しますが、実際の使われ方には大きな違いがあります。
項目 | on | nous |
---|---|---|
文法上の扱い | 三人称単数 | 一人称複数 |
所有形容詞 | notre / nos | notre / nos |
会話での頻度 | 非常に高い | 比較的少ない |
ニュアンス | 口語的・親しみやすい | フォーマル・書き言葉 |
書き言葉やフォーマルな場面では nous が好まれますが、日常会話では on が自然です。
つまり、nous は形式的、on は口語的な表現と言えます。
5. まとめ
- on は不特定の人を表す不定代名詞。
- 意味は文脈次第で「人々」「誰か」「私たち」に変わる。
- 動詞は常に三人称単数扱い。
- 所有形容詞は notre / nos を用いる。
- 会話では nous より on が自然で一般的。