【フランス語文法#58】ジェロンディフの用法

フランス語のジェロンディフは、「〜しながら」「〜することで」などの意味を持ち、動作や状況を補足的に説明するときに使われる表現です。
英語の by doing や while doing に近い意味ですが、使い方や語順には独自のルールがあります。
このレッスンでは、ジェロンディフの構造と使い方、よく使われる動詞との組み合わせを解説していきます。
1. ジェロンディフとは?
ジェロンディフは、前置詞 en に動詞の現在分詞を組み合わせた構文です。
現在分詞は、1人称複数形(nous)の動詞の語幹に、-ant をつけて作ります。
【ジェロンディフ】en + 現在分詞(-ant形)
動詞の原形 | ジェロンディフ形 | 日本語の意味 |
---|---|---|
parler(話す) | en parlant | 話しながら/話すことで |
finir(終える) | en finissant | 終えながら/終えることで |
aller(行く) | en allant | 行きながら/行くことで |
そしてジェロンディフは、「〜しながら」「〜することで」といった、同時性・手段・原因・条件を示す副詞的な用法で使われます。
以下では、ジェロンディフの詳しい用法を解説していきます。
2. ジェロンディフの使い方
2-1. 同時性:〜しながら
ジェロンディフの最も基本的な用法です。2つの動作が同時に行われていることを表します。
- Elle cuisine en écoutant de la musique.
(彼女は料理をしながら音楽を聴いている)
この文では、主語「彼女」が「料理する」と「音楽を聴く」という2つの動作を同時に行っていることを示しています。
2-2. 手段・原因:〜することで
ジェロンディフは、ある動作が別の動作の原因や手段になっているときにも使われます。
英語で言えば、“by doing” や “through doing” にあたります。
- Il a réussi en travaillant dur.
(彼は一生懸命働くことで成功した)
→ 働くこと(en travaillant)が成功の「理由(手段)」になっている。 - Elle a appris le français en vivant en France.
(彼女はフランスに住むことでフランス語を覚えた)
→ 住むこと(en vivant)という「手段」が、フランス語の習得を可能にした。
この使い方は、努力や経験に基づく結果を説明する際に便利です。
2-3. 条件・仮定:〜すれば/〜しても
場合によっては、ジェロンディフは条件や仮定の意味にもなります。
- En étudiant tous les jours, tu réussiras.
(毎日勉強すれば、君はきっと成功するよ)
→ 勉強する(En étudiant)という条件が「成功する」ための仮定となっている。 - En partant maintenant, on arrivera à l’heure.
(今出発すれば、時間通りに着くだろう)
→ 今出る(En partant maintenant)という動作が「時間通りに到着する」ための条件となっている。
このように、主節の内容に対して「もし〜すれば」と、条件・仮定を示す形となっています。
3. ジェロンディフと現在分詞の違い
フランス語学習者が混乱しやすいポイントの一つが、ジェロンディフ(en + 現在分詞)と現在分詞(単独)の違いです。
どちらも「-ant」で終わる動詞の形を使いますが、文法的な役割と意味合いが異なります。
ジェロンディフ(en + 現在分詞)= 動詞を修飾する
- Il est entré en chantant.(彼は歌いながら入ってきた)
「入る」という動作に「歌う」という動作が同時に起きていることを、副詞的に説明しています。
現在分詞(単独)= 名詞を修飾する
- Un homme chantant une chanson est entré.
(歌を歌っている男が入ってきた)
現在分詞の場合、名詞 Un homme を “chantant une chanson”(歌っている)という分詞句が修飾しています。
つまり、ジェロンディフは動詞を修飾する副詞句、現在分詞は名詞を修飾する形容詞句/分詞句を作るという点で、両者は文法的な役割が異なります。
ジェロンディフと現在分詞のまとめ
項目 | ジェロンディフ(en + 現在分詞) | 現在分詞(単独) |
---|---|---|
構成 | en + 現在分詞(例:en parlant) | 現在分詞のみ(例:parlant) |
品詞的役割 | 副詞句(動詞を修飾) | 形容詞句/分詞句(名詞を修飾) |
使い方 | 動作の様態・手段・条件などを表す | 名詞にかかる「〜している〜」のような修飾 |
意味 | 「〜しながら」「〜することで」など | 「〜している(状態の)〜」 |
主語の条件 | 主節と主語は同じでなければならない | 主語が異なっていてもOK(ただし文脈で明確に) |
4. まとめ
- ジェロンディフは「en + 現在分詞(-ant)」の形で、「〜しながら」「〜することで」などの副詞的な意味を持つ。
- 用法は主に ①同時性、②手段・原因、③条件・仮定の3つ。
- 現在分詞は「nous形の語幹+-ant」で作る。不規則動詞(être, avoir, savoir)には特別な形がある。
- 主節とジェロンディフの主語は必ず一致させること。