初級文法

Lesson 06|エリジオン

Aoba

フランス語では、文章や会話において発音を滑らかにするため、語末の母音が脱落して次の語に連結する現象が頻繁に見られます。

これを「エリジオン(élision)」と呼びます。エリジオンは正しいフランス語のリズムやイントネーションを作るために欠かせない重要な要素です。

このレッスンでは、エリジオンのルール、例外、そして自然な使い方を詳しく学びます。

エリジオンとは?

エリジオン(élision)とは、語末が母音で終わる単語と、語頭が母音または無音のhで始まる単語が隣り合ったときに、語末の母音が省略され、アポストロフ(’)で接続される現象です。

これはフランス語独特の音の連続をスムーズにするためのルールであり、発音上も文法上も必須とされます。

エリジオンが起こる典型例をまとめると次の通りです:

対象エリジオン前エリジオン後日本語訳
定冠詞 lele amil’amiその友達(男性)
定冠詞 lala écolel’écoleその学校
人称代名詞 jeje aimej’aime私は〜が好きだ
否定辞 nene aime pasn’aime pas〜を好きではない
指示形容詞 cece hommecet homme(※形が変化)この男性
注意点

hで始まる語については無音のhのときにエリジオンが起こり、有音のhのときはエリジオンが起こりません。

文法のポイント解説

例文と解説

フランス語の文日本語訳解説
J’aime Paris.私はパリが好きだ。je → j’ にエリジオン
L’école est grande.その学校は大きい。la → l’ にエリジオン
N’aimez-vous pas le chocolat ?あなたはチョコレートが好きではないのですか?ne → n’ にエリジオン
Cet homme est gentil.この男性は親切だ。ce → cet に変化(エリジオンではなく語形変化)
L’enfant joue dans le parc.その子どもは公園で遊んでいる。le → l’ にエリジオン

なぜエリジオンが必要か

フランス語は音声の流れを非常に重視する言語です。

母音が連続する発音は不自然で聞き取りづらくなるため、母音の脱落(エリジオン)によって、音が途切れることなく滑らかに流れるリズムを作ります。

エリジオンを行わないと、文がぎこちなく聞こえるだけでなく、文法的にも誤りとされることがあるため、特に正式な場面では注意が必要です。

エリジオンが必須なケース

次の語の頭文字が母音(a, e, i, o, u)または無音のhで始まるとき、エリジオンが必須です。エリジオンしない形(例:je aime)は文法的に誤りとされます。

例えば、以下のようなケースでは必ずエリジオンが起こります。

定冠詞(le, la)

男性・女性名詞の前に付きますが、次の語が母音や無音hで始まる場合、l’ に短縮します。

  • 例:le ami → l’ami(その友達)、la école → l’école(その学校)

人称代名詞(je)

je(私は)が動詞の前に来るとき、次の動詞が母音で始まるならj’ に短縮します。

  • 例:je aime → j’aime(私は〜が好きだ)

否定辞(ne)

否定文を作るときのneも、次が母音で始まる場合はn’になります。

  • 例:ne aime pas → n’aime pas(〜を好きではない)

関係代名詞(que)

que(〜すること)も、次の語が母音で始まるときにqu’に短縮します。

  • 例:que il pense → qu’il pense(彼が考えること)

指示形容詞(ce)

ce(この)は、男性単数名詞の前で次が母音や無音hのとき、cetに形が変わります(エリジオンではなく語形変化)。

  • 例:ce homme → cet homme(この男性)

無音/有音のh

エリジオンは、無音のh(アッシュ)で始まる単語にも適用されます。例えば:

  • l’homme(その男性)→ エリジオンする

一方、有音のhで始まる単語にはエリジオンは起こりません。例えば:

  • le héros(その英雄)→ エリジオンしない

無音h有音hの違いは発音では判別できず、単語ごとに決まっているため、辞書などで覚えるしかありません。

これはフランス語学習者にとってつまずきやすいポイントのひとつです。

エリジオンとリエゾンの違い

エリジオンと似た現象に「リエゾン(liaison)」がありますが、両者は異なります。

項目エリジオンリエゾン
内容母音の脱落・アポストロフ子音と母音の連結
je aime → j’aimevous avez → [vu ‿z‿ ave]
目的発音の滑らかさ発音の滑らかさ
ポイント

エリジオンは文字レベルの変化(アポストロフ)、リエゾンは音声レベルの変化(子音の連結)と覚えておくとよいでしょう。

よくある間違い

  • エリジオンを忘れる: je aime(誤)→ j’aime(正)
  • 有音hの単語にエリジオンする: l’hôtel(正)、l’héros(誤)
  • リエゾンと混同する: vous‿ avez はリエゾンでありエリジオンではない
注意点

特に有音のhの単語は学習者が間違えやすいので注意が必要です。

まとめ

  • エリジオンは、語末母音を省略しアポストロフで繋ぐ文法上必須のルール。
  • 定冠詞、代名詞、否定辞など特定の単語で必ず行う。
  • 母音または無音のhが次に続く場合にエリジオンが適用される。
  • 有音のhの単語ではエリジオンしない。
  • エリジオンを使いこなすことは、自然で流れるようなフランス語の発音に直結する。
  • リエゾンとは異なる現象なので、混同しないように注意。

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