【フランス語文法#13】指示形容詞

フランス語では、「この本」「あの人」のように名詞を指し示すとき、指示形容詞(ce, cette, ces)を使います。
英語にも似た表現はありますが、フランス語では名詞の性別(男性・女性)と数(単数・複数)によって形が変わるのが特徴です。
今回は、指示形容詞の基本ルールと使い分け方、文脈に応じた自然な使い方を解説します。
1. 指示形容詞とは?
指示形容詞は、話し手が指し示したい特定の名詞に付く形容詞です。
日本語の「この」「その」「あの」に相当し、名詞とセットで使うのが基本です。
フランス語の指示形容詞は、以下のように名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に応じて変化します。
性・数 | 指示形容詞 | 例文 | 意味 |
---|---|---|---|
男性単数(子音始まり) | ce | ce livre | この本 |
男性単数(母音・無音h始まり) | cet | cet homme | この男性 |
女性単数 | cette | cette maison | この家 |
複数共通 | ces | ces enfants | これらの子どもたち |
2. 性と数による使い分け
フランス語の指示形容詞は、名詞の性別(男性・女性)と数(単数・複数)に合わせて形が変化します。
2-1. 男性単数→ ce / cet
- 男性単数+子音始まり → ce
- 男性単数+母音/無音h始まり → cet
ce は男性単数名詞が対象ですが、男性名詞が母音または無音の h で始まる場合は、cetを使います。
これはフランス語の発音を滑らかにするためのルールで、単語のつながり(リエゾン)をよくするために変化します。
2-2. 女性単数 → cette
cette はすべての女性単数名詞に使われます。
2-3. 複数形(性別に関係なく) → ces
ces は性別に関係なくすべての複数名詞に使われます。
3. -ci / -là を使った距離のニュアンス
フランス語では、より明確に「近いもの」と「遠いもの」を区別したいときは、ci(こちら)とlà(あちら)を使います。
これらの副詞を名詞の後ろに付けることで、話し手の位置に対する距離感を表すことができます。
- Cet homme-ci est mon père.
(こちらの男性は私の父です) - Ces fleurs-là sont magnifiques.
(あちらの花は素晴らしい)
また、この -ci / -làの使い分けは、話し手の心理的距離も表現することができます。
たとえば、-ciを使うと「親しみ」、-làを使うと「距離感・やや冷たい印象」を与える場合もあります。
- Ce garçon-ci est mon ami.(この男の子は私の友達です)
→ 近い・親しい感じ - Ce garçon-là est agaçant.(あの男の子は迷惑だ)
→ 距離を置いたニュアンス
4. 指示形容詞と定冠詞・不定冠詞の違い
フランス語には、名詞の前に置く語として、定冠詞(le, la, les)、不定冠詞(un, une, des)があります。
定冠詞・不定冠詞と、指示形容詞の違いを正しく理解することが大切です。
- 定冠詞:「聞き手も話し手も知っているもの」や「文脈で特定できるもの」に使います。
- 不定冠詞:「初めて登場するもの」「特定しないもの」に使います。
- 指示形容詞:「これ」「それ」など、話し手が指し示す特定の対象に使います。
つまり、指示形容詞は単なる「ある本」「その本」ではなく、「この本」「あの本」と、話し手が積極的に何かを示すニュアンスを持っています。
5. まとめ
- 指示形容詞は、名詞の性別(男性・女性)と数(単数・複数)によって形が変わる。
- 男性単数名詞が母音または無音h始まりの場合は cetを使う。
- 複数形には性別にかかわらず ces を使用する。
- より明確に区別したい場合は、名詞に-ci(近いもの)または -là(遠いもの)を付ける。