フランス語の文章では、主語が「〜される側」である場合に「受動態」を使います。
英語と同様に、能動態(〜する)ではなく、受動態(〜される)で表現したいときに使われます。
今回のレッスンでは、基本の形や使い方を中心に、フランス語の受動態の仕組みをしっかり理解していきましょう。
1. 受動態の構造
フランス語の受動態は、「〜される」という動作の受け手を主語にした文を作るときに使います。
英語の受動態(be + 過去分詞)と似た構造ですが、性と数の一致など、フランス語ならではのルールもあります。
基本形は次のようになります。
【受動態構文】主語 + être(活用)+ 過去分詞 +(par + 行為者)
この「être + 過去分詞」の形が、受動態の核となります。
また、主語が女性単数なら過去分詞に -e を、複数なら -s をつけるなど、英語の受動態にはない細かな変化も求められます。
- être の時制は文の内容に応じて変化します。
→ 現在なら est, 複合過去なら a été, 単純未来なら sera など。 - 過去分詞は、主語の性・数に一致させる必要があります。
→ 英語にはないルールです。
2. 性と数の一致が必要不可欠
フランス語の受動態における最大の特徴は、過去分詞が主語の性と数に一致するという点です。
これは受動態だけでなく、他の複合時制でも共通のルールですが、「être + 過去分詞」の形をとる受動態では特に目立ちます。
- 男性単数:Le document est signé.(その書類は署名されている)
- 女性単数:La lettre est signée.(その手紙は署名されている)
- 男性複数:Les documents sont signés.(それらの書類は署名されている)
- 女性複数:Les lettres sont signées.(それらの手紙は署名されている)
受動態を正しく使うには、過去分詞の性・数の変化パターンを覚えることが重要です。
3. être の時制を変えることで文の時制を調整
受動態の構文では、be動詞にあたる être の活用によって、文全体の時制が決まります。
- 現在形:Le film est vu par beaucoup de gens.
(その映画は多くの人に見られている) - 複合過去:Le film a été vu hier soir.
(その映画は昨夜見られた) - 半過去:Le film était vu chaque semaine.
(その映画は毎週見られていた) - 単純未来:Le film sera vu demain.
(その映画は明日見られるだろう)
4. par(〜によって)は省略可能
フランス語の受動態に使う「par」は、英語の受動態構文の「by(〜によって)」に相当します。
そして英語と同じように、フランス語の受動態でも行為者が特定されていない・重要でない場合は par 以下を省略するのが自然です。
- La décision a été prise.(決定が下された)
→ 誰が決めたかよりも「決定がなされた」という事実が重要。 - Les résultats ont été publiés.(結果が公開された)
→ 誰が公開したかは明示しなくてよい。
このように、受動態は「行為者を目立たせない中立的な表現」として、ニュースや公式発表でも使われます。
受動態がよく登場するシチュエーションには以下のようなものがあります。
- 報道文(ニュース記事、発表)
例:Le président a été élu par le peuple.(大統領は国民に選ばれた) - 公的な手続きや通知
例:Votre dossier a été accepté.(あなたの書類は受理されました) - 客観的な説明
例:Ce produit est fabriqué en France.(この製品はフランスで作られています)
5. まとめ
- フランス語の受動態は être + 過去分詞 の形で作り、過去分詞は主語の性・数に一致させる。
- 文の時制によって、être の形を適切に変える(例:est / a été / sera など)。
- 「par + 行為者」の形は、必要な場合のみ明記する(多くは省略される)。
- 過去分詞の変化と時制の一致が鍵。文構造をしっかり把握して使い分ける練習が必要。