【初中級文法⑫】補語人称代名詞の使い方

フランス語の動詞には「何を(誰を)」や「誰に」といった目的語が必要なものが多くあります。
その目的語を人称代名詞で置き換えるのが「補語人称代名詞」です。日本語では「彼に話す」「彼女を知っている」のように目的語が代名詞になる場面に相当します。
このレッスンでは、補語人称代名詞の種類と使い方、正しい語順と注意点を詳しく学び、会話や文章をより自然で簡潔にする表現力を身につけましょう。
補語人称代名詞とは?
フランス語の文では、動詞の行為を受ける対象、つまり目的語(補語)を必要とする場合が多くあります。
この目的語が「人」や「物」であるとき、繰り返しを避けて簡潔に言い換えるために用いられるのが「補語人称代名詞」です。
補語人称代名詞とは、動詞の目的語(直接目的語・間接目的語)として使われる人称代名詞です。
- Je vois Marie.(私はマリーを見る)→ Je la vois.(私は彼女を見る)
このように、Marie を「la」という代名詞に置き換えて表現します。また、文中では動詞の前に置かれるのが原則です。
補語人称代名詞には、置き換える目的語の種類に応じて2つのタイプの代名詞があります。
直接目的語(me, te, le, la, nous, vous, les)
主に「〜を見る」「〜食べる」など、動詞のすぐ後に目的語を取るときに使います。
人称 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | me(私を) | nous(私たちを) |
2人称 | te(君を) | vous(あなた/あなたたちを) |
3人称 | le(彼/それを)la(彼女/それを) | les(彼ら/彼女ら/それらを) |
間接目的語(me, te, lui, nous, vous, leur)
多くの場合、「à + 人」という形の目的語を代名詞で言い換えるときに使います。
人称 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | me(私に) | nous(私たちに) |
2人称 | te(君に) | vous(あなたに/あなたたちに) |
3人称 | lui(彼に/彼女に) | leur(彼らに/彼女らに) |
例文と解説
Je vois Marie. → Je la vois.(私はマリーを見る。→ 彼女を見る)
voir(見る) は直接目的語を取る動詞。Marie を3人称女性単数 la に置き換え、動詞 voir の直前に置きます。文の語順は主語 → 補語代名詞 → 動詞。
Tu invites Paul ? → Tu l’invites ?(君はポールを招待する?→ 彼を招待する?)
inviter も直接目的語を取ります。Paul を le に置き換え、動詞が母音で始まるため省略形「l’」を使います。これにより自然な発音が保たれます。
Il nous aime.(彼は私たちを愛している)
1人称複数 nous は、文中では主語ではなく直接目的語として使われています。そのため、動詞 aimer の直前に配置されています。
Elle parle à son frère. → Elle lui parle.(彼女は弟に話しかける。→ 彼に話しかける)
parler à(〜に話す)では à son frère が間接目的語なので、lui に置き換えます。lui は3人称単数の人物に使う間接目的語代名詞です。
Ils écrivent à leurs amis. → Ils leur écrivent.(彼らは友達に手紙を書く。→ 彼らに書く)
écrire à(〜に書く)の目的語 à leurs amis(複数)を、3人称複数の間接目的語 leur に置き換えます。
Nous écrivons à vous. → Nous vous écrivons.(私たちはあなたに手紙を書く)
vous は2人称複数(または丁寧な単数)の間接目的語。また、直接目的語(あなたを/あなたたちを)としても使えます。
文法のポイント解説
直接目的語と間接目的語の見分け方
フランス語では、動詞によって目的語の形が変わるため、「直接目的語」か「間接目的語」かを意識する必要があります。
直接目的語 = 前置詞なし
動詞のすぐあとに名詞が来る場合、それは直接目的語です。
- Je connais Paul.(私はポールを知っている)
→ 目的語 Paul は前置詞なしで直接つながっている → le
- Tu regardes la télévision.(君はテレビを見ている)
→ la télévision は直接目的語 → la
間接目的語 = à + 人
「à + 人」で導かれる目的語は、間接目的語と判断します。
- Elle parle à son frère.(彼女は弟に話しかける)
→ à son frère は間接目的語 → lui - Ils écrivent à leurs amis.(彼らは友達に書いている)
→ à leurs amis → leur
me, te, nous, vous は共通の代名詞
1人称と2人称の補語代名詞は、直接目的語にも間接目的語にも同じ形(me, te, nous, vous)を使います。
- Il me voit.(彼は私を見ている)→ 直接目的語
- Il me parle.(彼は私に話している)→ 間接目的語
このように、動詞の意味によって「〜を」か「〜に」かが変わるため、文脈で判断します。
代名詞の語順ルール
補語人称代名詞は、原則として活用された動詞の直前に置きます。
- Je le vois.(私は彼を見ます)
- Tu lui téléphones.(君は彼に電話をかける)
複合時制では助動詞の前に置きます。
- Je l’ai vu.(私は彼を見た)
- Elle leur a parlé.(彼女は彼らに話しかけた)
まとめ
- 補語人称代名詞は、動詞の目的語を代名詞に置き換える表現で、直接目的語と間接目的語に分かれる。
- 直接目的語(me, te, le, la, nous, vous, les)/ 間接目的語(me, te, lui, nous, vous, leur)
- me, te, nous, vous は直接・間接の両方に使われるため、文脈で意味を判断する。
- 文法的には動詞の直前に置くのが基本ルール。
- 正しく使えば、繰り返しを避けて自然で滑らかな表現が可能になる。