【初中級文法⑧】大過去の使い方

フランス語の大過去は、過去の中でもさらに前の出来事を表すときに使われる時制です。
日本語では「〜していた」「〜してしまっていた」「〜していたところだった」などの表現に相当します。
このレッスンでは、大過去の作り方と使い方を学び、過去の中での時間の流れを自然に表現できるようになることを目指します。
大過去とは?
フランス語の大過去は、ある出来事が起こった「過去の基準点よりもさらに前に起きていたこと」を示すための文法時制です。
主に以下のような文脈で使われます:
- ある出来事の背景として、さらに前の出来事を語るとき
- 「〜した後で〜した」「〜する前に〜していた」といった時系列の前後関係を明確にしたいとき
- 過去の回想や説明で「すでに完了していた動作」を描写したいとき
例文:
- Quand je suis arrivé, il avait déjà fini son travail.(私が到着したとき、彼はすでに仕事を終えていた)
このように、過去の「到着した(過去形)」より前に起きた「仕事を終えた」という動作を大過去で表します。
大過去の構造
大過去は、以下のように構成されます。
【大過去】 avoir / être の半過去形 + 過去分詞
- 【avoir + 過去分詞】:J’avais mangé.(私は食べていた)
- 【être + 過去分詞】:Elle était partie.(彼女は出かけていた)
半過去形の活用一覧
主語 | avoir(半過去) | être(半過去) |
---|---|---|
je | avais | étais |
tu | avais | étais |
il / elle / on | avait | était |
nous | avions | étions |
vous | aviez | étiez |
ils / elles | avaient | étaient |
この avoir / être の活用形と過去分詞を組み合わせて、大過去をつくります。
注意点として、大過去に使われる助動詞が être の場合、過去分詞は主語の性と数に応じて変化します。
avoir を使う動詞では基本的に一致しませんが、直接目的語が動詞の前に来る場合には一致が発生するという例外もあります。
例文と解説
J’avais déjà mangé quand il est arrivé.(彼が来たとき、私はすでに食事を済ませていた)
複合過去の「彼が来た(est arrivé)」が基準点となり、それよりも前の出来事「食事を済ませていた(avais mangé)」に大過去が使われています。déjà(すでに)が入っている点にも注目。主語 je に対応して、avoir の半過去 avais +過去分詞 mangé という構成です。。
Elle était partie avant midi.(彼女は正午前に出かけてしまっていた)
移動動詞 partir を使っているため、助動詞は être。主語が女性単数なので、過去分詞に性の一致も発生しています。avant midi(正午より前に)が基準点、つまり、正午の時点より前の行為を表すために大過去が使われています。
Nous avions terminé le travail avant le week-end.(私たちは週末前にその仕事を終えていた)
動詞 terminer は avoir を使うので、主語 nous に合わせて avions terminé とします。過去の「週末」を基準にして、それ以前に完了していたことを大過去で表現しています。
Ils avaient déjà vu ce film.(彼らはその映画をすでに見ていた)
voir(見る)の過去分詞は vu。主語 ils に対応して、 avaient vu となります。大過去は時間副詞 déjà と相性が良く、経験・完了の強調として大過去が自然に使われる典型例です。
Tu avais oublié ton portefeuille.(君は財布を忘れていた)
主語 tu に対して、avais oublié を使用。財布を忘れたのは別の出来事(たとえば到着など)より前の出来事なので、大過去で表現します。
文法のポイント解説
大過去は「2つの過去」があるときに使う
フランス語で大過去が使われるのは、2つの過去の出来事があるときです。
- 1つ目:基準となる過去の出来事(複合過去・半過去など)
- 2つ目:それよりもさらに前に起きていたこと(大過去)
上記のように文の中に過去が2つ以上ある場合、その時間の順序(何が先で、何が後か)を明確にする必要があります。つまり、大過去では「時系列」が非常に重要になります。
たとえば次のような対比を見てください:
- Quand je suis arrivé, il a fermé la porte.(私が着いたとき、彼はドアを閉めた)
→ ほぼ同時に起こった出来事なので、複合過去を単に2つ使って表現 - Quand je suis arrivé, il avait déjà fermé la porte.(私が着いたとき、彼はすでにドアを閉めていた)
→ 私が着く前に、ドアを閉める行為はすでに完了していた → 大過去の出番
このように、「先に起こった方」を大過去で、「後に起こった方」を複合過去や半過去で表すと、フランス語らしい時系列表現になります。
大過去は「背景」「状況説明」「理由づけ」にも使える
会話や物語の中では、大過去が単なる動作の順序だけでなく、背景の提示や状況の説明、あるいは理由づけの表現としても使われます。
- J’avais oublié mon parapluie, alors j’ai été mouillé.(傘を忘れていたので、濡れてしまった)
→ 「忘れた」ことは「濡れる」より前の出来事なので、「濡れた理由(J’avais oublié mon parapluie)」に大過去を使用 - Elle était déjà partie quand nous sommes arrivés.(私たちが到着したときには、彼女はすでに出発していた)
→ 文の時系列は「彼女の出発」→ 「私たちが到着」なので、背景・状況の提示として「彼女の出発(Elle était déjà partie)」を大過去で表現
大過去を使うときの目印となる表現
大過去が使われやすい文脈には、ある程度定型的な表現や接続詞が登場します。
以下は大過去とよく一緒に使われる語句です:
表現 | 意味 | 大過去との関係 |
---|---|---|
quand | ~したとき | 時間の基準点を作る(後に複合過去) |
avant que | ~する前に | 大過去の文に続くことが多い(従属節は接続法) |
déjà | すでに | 大過去の完了のニュアンスを強調する |
parce que | ~だったので | 結果と原因の前後関係を示す構文に使われる |
- Quand il est arrivé, j’avais déjà fermé la porte.(彼が到着したとき、私はすでにドアを閉めていた)
→déjà(すでに)を使うことで、行為の完了を強調。 - Il était parti quand j’ai téléphoné.(電話したときには出発していた)
→ quand(〜したとき)が基準となり、行為の前後関係が明確に。
まとめ
- 大過去は、「過去の基準点より前の出来事」を表す時制。
- 構成は「avoir / être の半過去形 + 過去分詞」。
- 移動動詞や代名動詞では être を使い、過去分詞の性・数の一致も必要。
- 「déjà」「quand」「avant que」などと組み合わせて自然に使う。
- 他の過去時制(複合過去・半過去)との関係を整理しておくと、表現の幅が広がる。