【初中級文法⑤】複合過去の être / avoir の使い分け

フランス語の過去表現のひとつ「複合過去」は、助動詞+過去分詞という形で作ります。
このとき使う助動詞には avoir と être の2種類がありますが、どちらを使うかは動詞によって決まっています。
このレッスンでは、être / avoir の使い分けのルールと、その理由・代表的な動詞を、例文を通して具体的に学んでいきましょう。
複合過去の être / avoir の使い分けとは?
フランス語で過去の出来事を表すとき、よく使われる時制が複合過去です。
これは、英語の「I have eaten」のような表現に近く、「今とつながる過去の出来事」や「結果が今に残っている過去の行動」を表します。
複合過去は次のような形で作られます:
助動詞(être / avoir の現在形)+ 過去分詞
このとき使われる助動詞には、「avoir」と「être」の2種類があります。
複合過去の助動詞は大半が avoir が使われますが、動作・状態を表す一部の動詞や再帰動詞ではêtreを使います。
助動詞 avoir を使う動詞の特徴
avoir を使う動詞は、最も一般的です。次のような特徴をもつ動詞が当てはまります。
行為や動作を表す動詞
parler(話す)、manger(食べる)、regarder(見る)、finir(終える)など、「行動や行為」を表す一般動詞。
目的語を取る他動詞
「〜を…する」といった、目的語を取る他動詞にも avoir が使われます。
- Elle a lu un livre.(彼女は本を読んだ)
→「un livre」が目的語
助動詞 être を使う動詞の特徴
être を使う動詞には、以下のような特徴があります。
移動を表す動詞
aller(行く)、venir(来る)、partir(出発する)、arriver(到着する)など、主語が「どこかに行った/来た」など、場所の変化がある動詞。
存在・状態の変化を表す動詞
naître(生まれる)、mourir(死ぬ)、tomber(倒れる)など、存在の始まりや終わり、変化が起きる動詞も être が使われます。
再帰動詞(se〜)
再帰動詞とは、se lever(起きる)、se laver(洗う)、se coucher(寝る)など、自分自身に動作が向かう動詞のことです。こちらも文法的に être を使うのが決まりです。
例文と解説
J’ai mangé une pomme.(私はリンゴを食べた)
動詞 manger(食べる) は行為動詞で移動を含まないため、avoir を使用。 主語 je に対して助動詞 ai(avoir の1人称単数)+過去分詞 mangé を用います。語尾の é は性・数と関係なく固定。
Elle est allée au marché.(彼女は市場に行った)
aller(行く) は移動動詞なので être を使用。 主語 Elle に対し、助動詞 est +過去分詞allée。主語が女性単数のため、過去分詞に -e をつけて「allée」となります。
Nous avons fini le travail.(私たちは仕事を終えた)
finir(終える)は移動を伴わない一般動詞なので avoir を使用。 助動詞 avons(avoir の1人称複数)+過去分詞 fini という構成です。
Ils sont arrivés en retard.(彼らは遅れて到着した)
arriver(到着する)は移動動詞なので être を使用。 主語が男性複数 Ils なので、過去分詞arrivé に「-s」を付けて「arrivés」とします。
Tu es né en avril ?(君は4月に生まれたの?)
naître(生まれる)は状態変化を表す動詞なので、 être を使用。 主語が男性単数 Tu の場合、過去分詞は né 。女性なら「née」にする必要があります。
文法のポイント解説
avoir を使う動詞は「動作」中心
avoir を使う動詞は、主語の変化とは関係なく、主語が何かの動作をする/何かを完了させるという内容を表すときに使います。
- Tu as fini ton travail.(君は仕事を終えた)
→ 「終えた」という完了した動作 → avoir 使用 - Ils ont regardé un film.(彼らは映画を観た)
→ 観るという行動そのもの → avoir 使用 - J’ai ouvert la porte.(私はドアを開けた)
→ 「ドアを開けた」という目的語を伴う行動 → avoir 使用
être を使う動詞は「主語の変化」がカギ
être を使う動詞は、主語が「どこかへ行く」「変化する」「状態が変わる」といった、往来発着、存在・状態変化の意味を持つ動詞に限られます。
- Elle est arrivée à l’heure.(彼女は時間通りに到着した)
→ 主語「彼女」が、ある場所に到達した=状態の変化 → être 使用 - Il est mort en 1995.(彼は1995年に亡くなった)
→ 主語「彼」が生から死に変化した=存在の変化 → être 使用 - Nous sommes montés dans le train.(私たちは電車に乗った)
→ 「乗る」=空間的な移動が起きている → être 使用
助動詞が être の場合、主語が何かしらの「変化」や「移動」を経験していると考えると理解しやすくなります。
être を使う場合の「性・数の一致」に注意
être を使う複合過去では、主語の性・数に応じて、過去分詞が語尾変化するというルールがあります。
主語 | 例 | 過去分詞の形 |
---|---|---|
男性単数 | Il est allé. | allé(変化なし) |
女性単数 | Elle est allée. | allée(-e) |
男性複数 | Ils sont allés. | allés(-s) |
女性複数 | Elles sont allées. | allées(-es) |
再帰動詞(se〜)も être を使う
再帰動詞とは、「se lever(起きる)」「se laver(自分を洗う)」のように、主語が自分に対して行う動作を表す動詞です。これらも être を助動詞として使います。
- Je me suis levé.(私は起きた)
- Elle s’est lavée.(彼女は体を洗った)
再帰動詞の場合も、主語の性・数に合わせて過去分詞が一致します。
まとめ
- 複合過去は 「助動詞+過去分詞」で構成される。
- avoir を使う動詞が基本だが、移動や状態変化の動詞・再帰動詞は être を使う。
- être を使うときは、過去分詞を主語の性・数に応じて一致させる必要がある。
- avoir を使うときは、基本的に過去分詞は変化しない(一部例外あり)。