【初級文法⑭】形容詞の性数一致

フランス語では、形容詞は名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に合わせて形を変化させます。
この「性数一致」は、フランス語の基本ルールのひとつであり、正しい文を作るためには避けて通れません。
今回は、形容詞の性数一致の基本ルールから、よくある例外、自然な使い方のコツまでを体系的に学んでいきます。
形容詞の性数一致とは?
フランス語では、形容詞は名詞に合わせて性(男性・女性)と数(単数・複数)を一致させる必要があります。
英語では形容詞の形は基本的に変化しませんが、フランス語では文法的な一致が必須です。
名詞の性・数 | 形容詞の語尾 | 例 |
---|---|---|
男性単数 | 語幹そのまま | un livre intéressant(面白い本) |
女性単数 | 語幹+e | une maison intéressante(面白い家) |
男性複数 | 語幹+s | des livres intéressants(面白い本たち) |
女性複数 | 語幹+es | des maisons intéressantes(面白い家たち) |
文法のポイント解説
例文と表解説
フランス語の文 | 日本語訳 | 解説 |
---|---|---|
C’est un petit chien. | これは小さな犬だ。 | 男性単数:petit(小さい)そのまま |
J’ai une petite voiture. | 私は小さな車を持っている。 | 女性単数:petite(eを追加) |
Ce sont des petits chats. | これは小さな猫たちだ。 | 男性複数:petits(sを追加) |
Elle a des petites maisons. | 彼女は小さな家を持っている。 | 女性複数:petites(e + sを追加) |
Il lit un livre intéressant. | 彼は面白い本を読んでいる。 | 男性単数:intéressant(原形) |
Elle raconte une histoire intéressante. | 彼女は面白い話を語っている。 | 女性単数:intéressante(e追加) |
形容詞の語尾変化とその規則性
基本的に、男性単数形の形容詞をベースにして、以下のように変化します。
特に注意すべきは、もともとeで終わる形容詞(例:jeune)は男性・女性単数形で形が変わりません。
- un enfant jeune(若い子ども)
- une fille jeune(若い少女)
また、語尾がsまたはxで終わる場合、複数形でも追加されず形はそのままです。
- un garçon heureux(幸せな少年)
- des garçons heureux(幸せな少年たち)
不規則変化する形容詞に注意
フランス語には、基本ルールに従わない不規則変化の形容詞もあります。特に日常会話でよく使うものは以下の通りです。
男性単数 | 女性単数 | 意味 |
---|---|---|
beau | belle | 美しい |
nouveau | nouvelle | 新しい |
vieux | vieille | 古い |
これらの形容詞は、単に-eを足すのではなく、語幹自体が変化するため、特別に覚える必要があります。
母音・無音hの前で使う特別な形
さらにこれらの形容詞には、男性名詞の母音・無音hの前で使われる特別な形(beau → bel, nouveau → nouvel, vieux → vieil)が存在します。
通常形 | 母音・無音h前の特別形 |
---|---|
beau | bel |
nouveau | nouvel |
vieux | vieil |
これは発音をなめらかにするための変化で、リエゾン(音のつながり)を良くする効果があります。
複数形における性の優先順位
フランス語では、複数形の形容詞の性(男性形・女性形)を決めるとき、特別なルールが存在します。
もし、修飾する名詞がすべて女性名詞なら、形容詞は女性複数形を取ります。
しかし、たとえ名詞の中に男性名詞が1つでも混ざっていたら、形容詞は男性複数形になります。
- 【すべて女性の場合】des filles intelligentes(賢い女の子たち)
- 【男性が含まれている場合】un garçon et une fille intelligents(賢い男の子と女の子)
複合名詞と形容詞の位置
形容詞は通常、名詞の後ろに置かれるのがフランス語の基本ですが、短い形容詞やよく使われる形容詞(beau, grand, petitなど)は名詞の前に置かれることが多いです。
- une grande maison(大きな家)
- un petit garçon(小さな男の子)
位置によって意味が変わる形容詞
形容詞の位置によってニュアンスが変わるケースもあります。これは中上級でもよく問われる重要ポイントです。
前に置く場合 | 後ろに置く場合 | 意味の違い |
---|---|---|
un ancien professeur | un professeur ancien | 元・かつての教授 / 年老いた教授 |
un grand homme | un homme grand | 偉大な人 / 背の高い人 |
une pauvre fille | une fille pauvre | かわいそうな女の子 / 貧しい女の子 |
まとめ
- フランス語の形容詞は、名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に応じて語尾が変化する。
- 基本ルール:e追加(女性)、s追加(複数)、es追加(女性複数)。
- 不規則変化する形容詞もあり、特に日常で使う形容詞は早めに覚えると良い。
- 母音・無音hの前では特別な形(bel, nouvel, vieil)を使う。
- 複数名詞にかかる場合は、性が混在しても男性形が優先される。
- 形容詞の位置にも注意。名詞の前か後ろかでニュアンスが変わることがある。