フランス語の受動態のバリエーション|構文の違いを徹底解説

フランス語の受動態は「être + 過去分詞」を使うのが基本形ですが、実際の文章や会話では、それ以外の方法でも「〜される」という意味を表すことができます。
特に書き言葉や会話では、ニュアンスの違いや文体の好みに応じて、受動の意味を示す表現が複数使われています。
今回は、フランス語における受動態の基本形と、さまざまな受動態のバリエーションを整理しながら解説していきます。
1. 基本の受動態(être + 過去分詞)
フランス語で最も標準的な受動態の形は、「être + 過去分詞」です。英語の受動態(be + 過去分詞)と非常に似ています。
そして、フランス語の受動態は英語とは異なり、過去分詞は主語の性・数に一致させます。
- Le livre est lu par Marie.
(その本はマリーに読まれる) - La maison a été construite par un architecte célèbre.
(その家は有名な建築家によって建てられた)
「être + 過去分詞」の受動態は書き言葉・正式な文でよく使われる一方、会話ではやや硬い響きになります。
そのため、実際の会話では別の表現方法で受動の意味を表すことが多いです。
2. 代名動詞を使う表現
フランス語では、代名動詞(se + 動詞)で受動の意味を表すことがあります。この表現は、主語が「物」の場合によく使われます。
- Cela se voit facilement.
(それは簡単に見られる → 簡単にわかる) - Cette porte se ferme automatiquement.
(このドアは自動的に閉まる)
能動文に近い自然な響きがあるため、会話や日常的な文脈では、受動態より代名動詞を使う方が好まれます。
3. 不定代名詞 on を使う表現
フランス語では「人に〜される」を表すときに、不定代名詞 on を受動態の代替表現として使うことがあります。
「誰か」「人々」という不特定の主語を立てることで、実質的に受動の意味になります。
- On parle français dans ce pays.
(この国ではフランス語が話されている) - On m’a invité à la fête.
(私はパーティーに招待された)
例文の意味としては、英語の “People say …” や “They invited me …” に近いです。
4. se faire + 不定詞(〜される)
「se faire + 不定詞」は、「〜される」「〜させられる」という意味を持ちます。
文脈によって、依頼表現のほか、「不本意に〜される」という被害表現のニュアンスにもなります。
- Elle s’est fait couper les cheveux.
(彼女は髪を切ってもらった) - Il s’est fait voler son portefeuille.
(彼は財布を盗まれた) - Elle s’est fait licencier par son patron.
(彼女は上司に解雇された)
単純な受動態(être + 過去分詞)よりも感情やニュアンスを伝えやすいのが特徴です。
5. se laisser + 不定詞(〜されてしまう)
「se laisser + 不定詞」は、「〜されるままにする」「〜されてしまう」というニュアンスを表します。
主体が自分の意思を完全には働かせず、相手や状況に流されてしまうときに使われます。
- Il s’est laissé convaincre.
(彼は説得されてしまった/説得に応じた) - Elle s’est laissée emporter par l’émotion.
(彼女は感情に流されてしまった)
「受け身的な態度」や「無抵抗で影響を受けた」という意味を表したい時に便利です。
6. まとめ
- フランス語の受動態は「être + 過去分詞」が基本。ただし実際の会話では避けられ、次のようなバリエーションが多用される。
- 代名動詞(se + 動詞):自然で客観的な表現。
- on + 動詞:口語的で簡潔。
- se faire + 不定詞:被害や依頼を表す。
- se laisser + 不定詞:受け身的な態度や影響を受ける。
- 受動態を使い分けることで、より自然でニュアンス豊かなフランス語表現が可能になる。