【フランス語文法#53】il y a の表現

フランス語で「〜がある」「〜がいる」と言いたいときに使う表現が、il y a [イリヤ]という構文です。
日常会話でも文章でもよく使われ、動詞の時制によって「〜があった」「〜がいるだろう」などのようにさまざまな意味で使われます。
このレッスンでは、il y a の文の作り方と使い方、過去形・否定文での変化なども含めて学んでいきます。
1. il y a の基本構造と意味
il y a は、英語の “there is / there are” に相当する表現で、「何かがある」「誰かがいる」といった存在を表すときに使います。
この文は、以下のような構造になっています。
il(形式主語) + y(場所の代名詞) + a(avoir の三人称単数形)
この3語で「il y a」という固定表現を作り、「〜がある」「〜がいる」という意味になります。
このとき、chat(猫)や voiture(車)などの名詞が主役で、il y a はその存在を述べるための“枠組み”になります。
2, il y a 構文の具体的な使い方
2-1. 基本の形:il y a + 名詞
この構造は、「何かが存在する(ある/いる)」ことを表します。
- Il y a un chat.(猫が1匹いる)
- Il y a une voiture devant la maison.(家の前に車が1台ある)
このとき、chat(猫)やvoiture(車)などの名詞が主役となり、il y a はその存在を述べるための“枠組み”になります。
2-2. 新しい情報の提示
il y a の文は、会話の中で「新しい情報」を伝える場面に特に使われます。
英語の there is / there are とほぼ同じ役割です。
- Il y a un problème.(問題があります)
→ 相手がまだ知らない問題を提示している。 - Il y a quelqu’un à la porte.(誰かがドアのところにいる)
→ 聞き手にとって新しい事実を知らせている。
2-3. 数量表現とともに使う
il y a は数量表現とも相性が良く、“il y a 〜“ の後に「数量+名詞」を続けることで「いくつあるか」「どれくらいあるか」を表すことができます。
- Il y a trois étudiants dans la salle.
(教室に学生が3人いる)
Il y a は単数でも複数でも使え、動詞 a(avoir)は3人称単数形のままで変わりません。
このように、動詞は常に「a」のままという点がフランス語の特徴であり、英語(there is / there are)とは異なるところです。
2-4. 時間表現としての il y a
もうひとつ重要なのが、「〜前に」という時間表現の意味で使われる il y a です。
このときの il y a は「存在の表現」ではなく、「時間の経過」を表します。
- Je l’ai vu il y a deux jours.(私は彼に2日前に会った)
- Il y a longtemps.(ずっと前に)
このように、「〜という出来事が〜前に起こった」という時間の表現としてもよく使われるため、存在の表現と混同しないように注意しましょう。
3. il y a の否定文:de への変化に注意
il y a の文章を否定するときは、以下のように “Il n’y a pas de 〜” の形になります。
- 【肯定文】Il y a un problème.(問題がある)
- 【否定文】Il n’y a pas de problème.(問題はない)
→ 不定冠詞 un が否定文では de に変化
否定の語「ne … pas」の間に、「y」と「a」が挟まれる形となります。
そして注意点として、不定詞 un / une / des は、否定文ではすべて「de」に統一されます。
この不定冠詞の変化はフランス語の否定文特有のルールで、初学者が見落としやすい部分です。
4. 過去時制と未来時制の作り方
il y a の「a」は動詞 avoir の一部なので、時制を変えれば文全体も過去時制や未来時制にできます。
時制 | 形 | 例文 | 訳 |
---|---|---|---|
現在 | il y a | Il y a un chat. | 猫がいる |
半過去 | il y avait | Il y avait du monde. | 人がいた(当時の様子を描写) |
複合過去 | il y a eu | Il y a eu un accident. | 事故が起きた(出来事の完了) |
単純未来 | il y aura | Il y aura une réunion demain. | 明日、会議があるだろう |
また、主語の数に関係なく、il y a の動詞は常に単数形(avoir の3人称単数)で使われます。
5. まとめ
- il y a は「〜がある」「〜がいる」を表す基本表現で、形式主語 il+中性代名詞 y+avoir の現在形 a で構成されている。
- 肯定文、数量を含む文、場所を伴う文に幅広く使える。
- 否定文では「de + 名詞」に形が変わる。
- 「〜前に」という時間表現としても重要。
- 時制を変えることで「あった」「あるだろう」なども表現できる。